Last Update : 2019/12/08 戻る

西上州 小沢岳・毛無岩

11月14日(木) 小沢岳(849m)
L:岡坂、M:加瀬、田中秀
 西上州の山は特異な形状の岩峰が売りであり、この小沢岳も地元・南牧村のパンフによれば「西上州のマッターホルンor槍ヶ岳」となる。しかし鋭く見えるのは北側(下仁田町側)からで、今日登る南側に位置する七久保登山口からの道は穏やかな家族向きハイキングコースである。明日の本番・毛無岩を前に、リーダーが膝の不調を訴える小生のために用意してくれたテストコースでもある。
 山は午後の半日で十分なので、その前の腹拵えにと、昭和前半にタイムスリップしたような駅前の古い町中を歩く。グルメなリーダーが目星を付けていたタンメン&餃子の大衆食堂「一番」を探すも残念ながら本日休業の看板、他の食堂も然りでこの辺りは水・木と連続の定休日となっている。あえなく車で少し戻り昼食。
 下仁田駅に近い鏑川の岸辺にある青い岩畳は「下仁田ジオパーク」の主要施設とも言える青岩公園となっている。因みにこの青岩は三波川結晶片岩(緑色片岩)で、2億年以上前(ジュラ紀〜白亜紀)に海底に堆積した泥岩が大陸プレートに押しつけられた付加体となり、低温高圧の変成作用を受け、地殻変動で隆起したものとという。この辺りは巨大カルデラ(本宿)跡の陥没壁、クリップ地形という根無し山などなど地質学上の宝庫となっている。東日本大震災もこの大きな動きの中では微少な事象かも知れない・・・恐ろしい。
 この鏑川の支流青倉川を遡る。水の流れる谷底は青い岩であったが、谷に迫る岩壁は鮮やかな白が目立つようになり。石灰鉱山(白石工業株式会社の白艶華工場)を過ぎる。白艶華(はくえんか/商品名)とは工業材料の炭酸カルシウムで、その昔、江戸城の築城にも用いられたという青倉の石灰(いしばい)である。
 12時過ぎ七久保登山口に着く。先着1台、別の業務中らしき1台は直ぐ立ち去った。此処までの道路は台風19号の出水の痕跡はあったが通行に支障は無く整備されていた。しかし、ここから先の林道は破壊されてほぼ跡形も無い。まるで沢登り状態で椚峠に辿り着く。ここには数台分の駐車スペースがあるが、今はもう上って来られる車は無い。
 小休止後尾根筋を歩く。暫くは使われなくなった林道が並走する。南に桧沢岳、東に稲含山と既に上部は錦の衣を脱いでしまった秋山の展望を楽しむ。残念ながら北、西側の展望は得られない。身体が温まる程度の速度で峠から45分、小さな急斜面を登り切ると小沢岳山頂に着いた。
 山頂には妙齢の姫君がランチマットの上でご休憩中。静かな山頂を独り楽しむ空気を我々は引き裂いてしまったのかも?ここで漸く北および西側の展望が開けた。遠く浅間山から榛名、妙義山、そして明日の毛無岩も姿を見せる。
KanaDake from OzawaDake

 帰路は30分程で椚峠に、更に30分、膝を悪化させないよう注意深く“沢下り”して登山口に戻った。
 今宵の宿は昨年と同じ「月形園」、風呂は狭いが女将の愛想は良い。既に明日同行の菅澤氏が先着、早速酒宴となる。
 <コースタイム>
 12:20 七久保登山口(670m、駐車、最終人家)
 12:45〜12:55 椚峠(845mP)
 13:40〜13:50 小沢岳山頂
 14:25 椚峠(845mP)
 14:50 七久保登山口

11月15日(金) 毛無岩(1,300m、南牧村のパンフでは東のピーク1,275mを採用)
 L:岡坂、M:菅澤、加瀬、田中秀
 登山口の道場集落入り口で二分した星尾川の右俣は、神社の北側で更に二分される。これを分ける尾根を登るのが尾根コース、今日はこれを往復する。尾根西側の沢を辿る沢コースは既に台風で壊滅したと聞くが、尾根コースも尾根取付き点までは東側の沢を遡るので今回の台風の影響が心配された。
 登山口の神社裏手にある駐車スペースには先着1台、我々の2台を駐めるには少々窮屈なので集落の西にある小高い平地に車を置く。神社裏手から一旦河原に下り、左岸沿いの杉林の中を暫く進み尾根の東側の沢に下りる。谷底は19号台風による大出水直後のためなのか石や腐植物等が無く、「青岩」が所々に滑滝を掛け美しい。テープや小ケルンを確認しながら取り付け点に着く。
 落ち葉が積み重なり土の見えない道らしき跡を20分余り急登して尾根の上に出る。“赤松の休み場”らしいが標識は無い、確かに赤松はあった。ここで休憩、水分補給、心配だった膝も何とかなりそうだ。暫くして1人の中高年男性が下りてきた。登山口で車中泊した由。
 尾根道は次第に痩せてナイフリッジがちょこちょこ現れる。西上州特有のヤブ岩であり、木々があるので恐怖感は無いがスリルはある。ナイフリッジ以外の場所も、尾根近くは暫く勾配が緩くても直ぐその先は谷が刻んだ絶壁であり油断は禁物。途中2箇所、頼りなさげなロープが張ってあったが、梯子や鎖などは一切整備されていない。この辺りが南牧村パンフが記している“上級”向けコースの所以であろう。  登るほどに色付いた葉は少なくなるが紅葉の尾根道は快適である。縦走路分岐を過ぎた1,200m付近の主稜線に上がるトラバース気味の道は、降り積もった落ち葉かき分ける音が心地良い。雪をかき分けるラッセルの季節ももう直ぐである。

KenashiIwa Ridge

KenashiIwa Top

 主稜線出でてからは手も使う登りとなる。それでも標高差は50m強、程なく見晴らしの良い岩の上に出る。狭い山頂は定員3人か?南西側に身を乗り出すことは怖い、300mあるという絶壁。ここでゆっくり休憩展望を楽しむ。北アや越後山脈付近は順調に雪が付いている。八ヶ岳や浅間山も日陰に僅かな雪の痕跡。  西隣の山は一昨年の立岩であるが、こちらからは“ドロミテ”の印象は持てない。東には昨年の鹿岳があるが此方のピークの方が高いので異様な岩峰の迫力は感じられない。南には来年狙っている大岩・碧岩が逆光で黒く猫の耳のように見える。
 下山は足に負担が増す。リーダー以外は皆さん傷持ちである。慎重の上にも慎重に下り結果は、登り2時間半、下り2時間40分であった。メジャーとなっていない山々、村の辺鄙さと特異な岩の景観をまた来期も11月中旬に味わいたい。
 <コースタイム>
 8:28 駐車スペース(道場集落、635m、星尾川上流の左俣右岸)
 8:35 神社(登山口)
 9:02 尾根取付点(715m)
 9:25 赤松の休み場(845m;下降点)
 10:28 縦走路分岐
 10:36 毛無岩東のコル
 11:00〜11:30 毛無岩山頂
 12:15〜12:28 ナイフリッジ(1,030m付近)
 13:18 赤松の休み場(845m;下降点)
 13:30 尾根取付点(715m)
 13:55 神社(登山口)
 14:08 駐車スペース
KenashiIwa Route
          以上 (記:田中秀和)

 
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