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ラ・ネージュ山スキー記録集III 


  発行日 1989年12月25日

山スキーの装備                   

                                   作野晃一 


 10年とは早いものである。私がクラブに入ってから、もうその年が過ぎ去った。当時は山スキーが見直されてきた時代の幕開けであった。かつて、日本の登山界に存在したスキー登山が消滅してしまって久しい。それ故、スキー登山、山スキーの用具も日本においては、発達・開発が止まってしまったといっても過言ではない。 しかし、この10年、雑誌に毎年山スキーの企画が載せられ、登山用品店に山スキーのコーナが設けられるとともに山スキーの用具も進歩・改良がなされてきた。それはヨーロッパの山スキー用具の流入という現象に負うところが大きいのは事実であるが…。我々山スキーを志す者として、装備は一大関心事である。そこで、今、山スキーの装備の変遷をたどってみたい。
 山スキーの用具といえば、スキー板、シール、靴及び締め具がその主役であろう。当会でも何度も用具について、カンカンガクガクの議論がなされ、かつ様々な調査がなされてきている。ラ・ネージュから主な装備関係の記事を拾うと、

  NO.37〜NO.41 山スキー同志会的山スキー考
  NO.81       同上の用具調査                   
  NO.82       同上の靴シリーズ                  
  NO.85       同上のシール編                   
  NO.86       同上の締め具編                   
  NO.123      山スキー用具(アンケート)             
  NO.124      装備雑感                      
  NO.126      私の装備                      
  NO.127      装備雑感                      
  NO.153      山スキー同志会的山スキー考(アンケート)      
  ラ・ネージュ記録集1  用具−経験による考察                
とたくさん出てくる。                              

 NO.153号の記事は当会の装備の変化について物語っており興味深い。そこでは、’82年と’88年の会員が持っている用具(スキー板、シール、靴及び締め具)について比較検討がなされている。主な変化は、次の通りである。’82年の段階では、靴は革製の兼用靴が主流、シールは取付式であったのが、’88年ではプラスチック製兼用靴が主流、シールは貼り付式となったことである。又、山スキー板、締具も’88年には多種多様になってきている。しかし、山スキー板、締具、シール、特に靴は全て、どれもヨーロッパからの輸入品が主であり、国産品は良いのが開発されていないのが目につく。国産品もないわけではないが、ヨーロッパ式の亜流であったりして、メーカが本格的な開発体制を採るほどまでには山スキー愛好家即ち山スキー市場があるわけではないことを物語っている。
 従って、靴などは、当然日本人の足型にあったものは少なく、靴ずれに悩まされている体験談もよく聞く。又、締具も多種販売されてきたが、ヨーロッパの雪質と日本の雪質の相違により、輸入品を日本で使用した結果欠陥らしきことも多々見られている。この辺については、ラ・ネージュNO.82、85、86号に詳しい。
 一方山スキーといえば、雪山での生活装備も、その大切な部分である。防風・防寒・防水衣料は、特に雪山において重要な役割をする。この衣料はこの10年で長足の進歩を示した。10年前私が山スキーを始めたころゴア・テックスが出始めた。雨具の大改善であった。特に雪山ではヤッケと雨具の双方を持つことがなくなり、装備の軽量化に寄与すること大であった。しかし、当初はゴワゴワして、いかにもゴワ・テックスという感じであり、油に対しても弱く、ラミネートがはがれやすく、はがれてしまうと防水性が全くダメで雨具とならなくなってしまったりという代物であった。それも、第2世代、第3世代ゴアになると様々な改良がなされ、良質の透湿・防水性の衣料となってきた。又、他の同様な透湿・防水性のフィルムも開発され、登山用具に応用されている。 
 山スキーの課題である「スピーディに行動」するための軽量化に随分貢献したものと思う。
 以上、山スキーの用具と、生活用具の中で特に防寒・防風・防水衣料に焦点を合わせて述べてきたが、双方の装備共この10年で大きく進歩・発達してきた。又、これからもさらに良くなっていくことであろう。しかし、最終的には使う人の問題である。自分に合った自分流の装備を、ラ・ネージュの記事やいろいろの雑誌から情報を集めた上でそろえていくことを心掛けたいものである。完全なものはないのであり、自分で工夫しながら使い込んでいくものである。しかし、欠陥品はどうしようもないので、そのようなものを掴まないよう、日頃の研究が大切であろう。
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