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ラ・ネージュ山スキー記録集III 


  発行日 1989年12月25日

塩見岳                     

南アルプス  三伏峠より往復                       

                   1984年12月30日〜1985年1月1日 
                          メンバ:L石垣隆宜、佐藤晶彦 


 正月は南アルプス・塩見岳(3047m)へ、スキー滑降の可能性は未知だが、冬の三千m峰には大いに魅力がある。南アルプスは、年末年始でも比較的天候が安定しているのも良い。


12月30日 快晴 
 前夜早めに伊那大島駅に入って仮眠、鹿塩行一番のバスは結構混んでいる。駒・仙丈程ではないが正月の塩見も人気が高いようだ。しかしスキーを持っているのは我々だけだ。鹿塩から樺沢までマイクロバスが出ているが、貧乏人は歩くに限る。今日は、スキーの付いた重いザックを三伏峠まで上げなければならない。沢から離れるところから登山道には雪が出てきたが、スキーで歩ける斜度ではない。スキーというハンディを背負っているにもかかわらず、割と速いペースで先行者を追い抜いていく。15時に三伏峠に到着、休憩後、少し烏帽子岳寄りに進んでから三伏小屋へ一滑りする。雪はクラストしており、ブッシュも出ていて快適とは言い難い。小屋のなかにツエルトを張る。 

【コースタイム】
鹿塩 8:00 −> 樺沢 9:20 −> 塩川小屋 10:20/35 −>   
三伏峠 15:00/25 −> 三伏小屋 15:50               


12月31日 快晴
 峠には戻らず、夏道沿いに本谷山の稜線を目指したが、歩かれていないようでラッセルとなる。しかも倒木が多く、スキーを持っていると煩わしい。稜線に出ると良く踏まれており、雪道が溝になっている。シールで登るが、時折の急登では溝のために斜登高が出来ず苦労する。引いていく方が良かったようだ。
 本谷山へ登ると、谷を隔てて塩見岳が素晴らしい。すぐ近くに見えるが、道はぐるっと回っているので先は長い。ここでシールを外し、スキー滑降を試みる。石垣さんは、短く切って150cm程にしたショートスキーで、ボブスレーコースのような登山道を快適に飛ばしていくが、私は木に引っかけたり、樹木に突っ込んだりで歩いた方が早いくらいだ。
夏の水場からは登りとなり、塩見小屋直下までスキーを持ち上げてデポする。小屋から上はアイゼンの世界だ。心配していた天狗岩上部の急登はクラストしておらず、岩も露出しており、アイゼンとストックで充分である。
 3047mの塩見岳山頂は期待通りの大展望、風もなく、冬山とは思えないような穏やかな天気だ。30分程ゆっくり展望を楽しみながら休んで下山、天狗岩を下るまでは慎重に歩く。スキーデポ地から樹林帯を滑降、石垣さんが快適に滑っていく。私はシールを付けたまま直滑降で滑る。本谷山へ登り返し、2498mの鞍部までは、夏のお花畑と思われる2ヶ所の斜面のみ滑降に適していたが、他は相変わらずのボブスレーコースだ。帰りは三伏峠経由にしたが、途中で小屋番に会い、小屋のなかにツエルトを張るなら小屋代を払えといわれるが、今日はツエルトを外に出し、テント代を支払うことで折り合いが付く。
スキーを持っているのは我々だけなので、三伏小屋のツエルトの持ち主だとすぐにバレてしまう。なお、この小屋番によれば、塩見周辺でスキーが楽しめる斜面はなく、腕に自信があれば、斜度40度以上の南沢(三伏峠から北に出る沢)が滑れるということだった。
 峠からは昨日同様、クラストした沢状を滑り、約束通りツエルトを外に出す。2枚のツエルトをダブルで使うと意外に暖かいようだ。

【コースタイム】
三伏小屋 6:15 −> 本谷山 7:30 −> 権右衛門沢源頭 8:45/9:00 −> 塩見小屋下部デポ地 10:00/30 −> 塩見岳 11:30/12:00 −> 
本谷山 14:35 −> 三伏峠 15:50/16:20 −> 三伏小屋 16:30


1月1日 快晴
 今日は快適斜面を求めて烏帽子岳へ向かうが、昨日の小屋番の話によると望みがなさそうだ。
 夏道を辿って烏帽子岳頂上に登り、北北東に派生する緩い尾根を滑る。昨日、塩見からも眺めた時は快適そうに見えた斜面も、いざ来てみるとクラストしており、這松が顔を出している。凹部に新雪があり、ほんの2〜3ターンだけ楽しめた。烏帽子へ登り返して、三伏沢源頭へ落ちる沢を滑る。次第に樹木が濃くなり、石垣さんは巧みに木をかわして滑っていくが、私はそう上手くは行かない。しかし樹林の中は雪質が良かった。
 ツエルトをたたんで、最終のバスに間に合うよう急いで下る。石垣さんは塩川小屋から暫くスケートが出来そうな氷の林道をスキーで下ったが、私は恐ろしくて担いだまま下った。
 普通に登っても2泊3日かかる塩見岳を、登頂だけでなく、スキーも楽しみ?ながら登ることが出来た。樹林帯など、制限された滑降についてはまだ修行が足りないようで、山スキーの奥の深さと難しいさを感じる山行であった。

【コースタイム】
三伏小屋 7:30 −> 烏帽子岳 8:35/9:00 −> (北北東尾根滑降) −> 
烏帽子岳 9:50 −> 三伏小屋 10:10/11:05 −> 塩川小屋 
14:15 −> 鹿塩 15:50 

                               (佐藤晶彦 記) 


【概念図】
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