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ラ・ネージュ山スキー記録集III 


  発行日 1989年12月25日

飯豊山 2                     

東北南部   地蔵岳より北股岳へ
                         1983年5月1日〜5月5日 
            L:小森宮秀昭、陶山泰、長谷川淳一、作野晃一、安達邦彦、
              今野桂子、金子芳一、重田富士夫、蔵田道子、佐藤まり 

5月1日
 臨時列車を喜多方で下り、予約してあったタクシーに乗り込む。陶山氏の交渉で最奥の駐車場までタクシーで入る。御沢小屋で水を汲みいよいよ登りにかかるが、山道はもちろんのこと山にも雪が無く少し心配になる。上十五里を過ぎてようやく雪の斜面となりシール登高となった。
 今回は私が不調で皆との間は開くばかり…。バテバテで剣が峰を越えると三国小屋に到着した。連休のため小屋は結構混んでいた。
                                  (安達記) 

5月2日
 明け方、雨音を聞きながら、今日は天気が悪そうだからゆっくり寝ていられるかなと思ったが、予定通りに起床、出発の頃には霧が深いが雨は止んだようだった。
 しかし小屋の外へ出てみるとまたポツポツと落ちてきた。とりあえず雨具を着けて出発する。相変わらず夏道をスキーをサイドに着けて歩く。足元には、カタクリの花が咲いている。ふもとで見るより小さな花たちは、天気が悪いせいか開いていない。
 種蒔山の手前で最初の休憩を取り、暑いので雨具は脱いでしまう。種蒔き山からの下り方向を誤り、いい斜面でスキーで下ろうなんて声も出たが、どうもおかしいと磁石で見れば確かに誤っていることがはっきりしたので、元のピークまで戻るとガスの切れ間より正しいルートも見え目印の竹竿もちゃんと立っていた。切り合わせの小屋までもしかしたらスキーでいけたのではないかと小屋から振り返って思う。(ちょうど晴れてきて斜面が見えた。)暫くスキーは雪の上を引きずっていけたが、飯豊本山への登りはまた、サイドに着けることとなる。
 ピークまでもう少しの所でおなかが空いて行動食をとるため休憩…。日が陰って風が吹くと寒いので岩陰に風を除けてのんびりする。本山の小屋を通り過ぎ頂上に立つがそこからでは雪が切れていて滑れず少し引き返して南側の斜面を谷に向かって滑りトラバース気味に御西岳に向かう。ちょうどまた少し晴れて今日初めての滑降に心がはやる。滑りやすいザラメで皆思い思いに飛ばすが、あまり下まで滑らずにトラバースしなくてはいけない。御西岳手前は再びスキーを引きずっていき、御西岳から板を着けるとガスと強風の中あっという間に小屋に着いた。時間的には、早かったので一休みしたら滑りに行きたかったが、ガスと強風は収まりそうも無く諦める。
 途中で遊べば良かったと思うが、小屋でのスペースを確保するため、とにかく先に小屋に行ってしまおうと言う考えも正しかった。遅く着いたパーティは外にテントを張りブロックなどを積んでいた。それでもこの日夕食後ガスが晴れ風もおさまったので夕焼けの夕食後の腹ごなしに一本滑る。それほど雪も硬くはなっておらず面白くあっという間に滑る。そして明日の楽しみにかける。ところがシュプールの跡とは別に熊の足跡もたくさん在ってちょっと不安になる。皆で滑れば恐くないというものか。
                                  (蔵田記) 

5月3日
 御西小屋周辺の沢を滑る…。御西岳周辺はどこも素晴らしい山スキー向きの斜面で雪質も三泊四日しても飽きずに楽しめる所である。 
                                  (陶山記) 

5月4日
 4日目も昨日に引き続いて快晴…。北股岳と烏帽子岳の石転び沢を上り詰めた所にあるカイラギ小屋が気のせいか4時間の行程とは思えない位近い距離に見える。6時30分御西小屋を出発した。
 尾根上の雪は所々切れてはいるが何とか付いているようだ。小屋を出てすぐは30〜40m位のわずかな下りであるが少しでも滑りたいというみんなの要求で滑って下りる。
雪面は、早朝のためガリガリに凍っているのでコケるとまるでコンクリートの上に転がったようだ…。そこから先は小さなピークの上り下りがズーーーーッと烏帽子岳まで続いていて、スキーで滑ったりそれを引張ったりと言ったようなことを繰り返した。9時烏帽子岳到着…。
 天気は上々である北の方角には、朝日連峰が飯豊に向かい合う感じで見え、その向こうには月山がうっすらと見える。カイラギ小屋は御西の小屋より見え隠れしながらグングン近づいてきて、今目の下にある。10時5分カイラギ小屋到着。
 小屋は明るく清潔で、今山行中立ち寄った小屋のなかで一番立派である。小屋の壁に「○○山岳会の皆さん、デポした品を処分して下さい。」と書かれた張り紙があった。
 さて、12時ちょうど本山行のフィナーレを飾る石転び沢の滑降に移る。石転び沢は、この沢がカイラギ沢となる所までほぼ一直線に伸びているので上から見ると全貌がよくわかる。上部は巾が相当広く斜面も急である。巾は、剣沢ほど無いが針ノ木沢よりも広いのではないだろうか…。しかし、そのどれよりも斜面は確実に30度以上ある気がした。 こんな斜面が高度1800mの小屋より1100m辺りまで続いている。 高度1100m辺りより斜面が緩くなり始め、それと共に小石や小枝といったようなものがいっぱい雪の上に見られるようになった。石転び沢の名の由来は、案外こんなところから来ているのかもしれない。石転び沢出合いまで滑って大休止。
 これから先は、ダラダラとした雪渓が、高度600m辺りまでズーーーーッと続く。そして本山行の最後の夜は、温身平上部の林の中にツエルトを張って過ごした。
                                  (重田記) 

5月5日
 前の晩の焚き火の跡をきれいに消してスキーを担ぎ出発する。山の麓は新緑が鮮やかだ。まだ雪の残る道を行くとじきに新しく砂防ダムのできた温身平に着く。沢は雪解け水で流れが速い。もう山雪シーズンも終わりに近い。まだ板で閉ざされている飯豊山荘前で休んでいると山菜取りや、釣り人、それに連休後半でスキーをしようという人達が結構登ってくる。橋からは右岸の道路を歩き国民宿舎梅花皮荘に着くとまだバスの時間まであるので、早速温泉代250円で5日間の汗を流す。8時59分のバスで小国へ…。
                                 (小森宮記) 

 今回の山行を振り返ってみると、全く天候と条件には恵まれていた。1週間前に行き先を黒部から飯豊に変更し、また10人もの大パーティになってしまったが、メンバーの人達の協力により楽しく事故も無く山行を終了でき本当に良かったと思う。 しかし個々に見ると事故の可能性が全く無かった訳ではなくルートファインディング、アイスバーン、ブロック雪崩の監視、シュルンド、クレバス、それに熊!?等の問題は、結局事故はなかったといって安心しきって良いものではないので気を緩めること無いようにしたいものです。それにしても今回の天気は本当に良かった。 

(御鏡沢)
 上部が扇状に広がったどでかい真っ白な雪の斜面である。出だしが急でパイロットがどう滑ったのか見えない。上部はまだ時間的に早いため雪が硬く板の振動が激しい。その為、板が外れ転倒したが、ストックによる滑落停止がぴたりと決まった。標高が下がる(時間が経つ)につれて雪質が良くなる。標高1510mより下は、コモさんの偵察によると狭くなりデブリが現れるということでここからシールで登り返す。
 10時頃フィルムクラストの最高の雪質となったが、残念ながら登りだ。登りに使った尾根の西側も素晴らしいコースとなっている。登り返し(シール)2時間10分、標高差740m 

(本カゴノ沢)
 この斜面も大斜面である。御鏡沢より少し斜度が緩く斜面全体が見渡せるので各自好きなルートを取れる。振り返るとみんなのシュプールが同志会のマークそのもののきれいな弧を描いている。沢が行く筋も入っているがどれも浅く問題はない。
 この辺は熊の足跡が多い。1630mで西側の尾根を乗り越すつもりだったが急峻で取り付けず沢に沿って登り返し尾根上の1800m地点に出た。登り返し(シール)1時間50分(途中休憩40分以上)、標高差450m

(御西沢)
 食後の腹ごなしにと5人(小森宮、重田、陶山、蔵田、佐藤)で6時ちょっと前に小屋を出る。残りの人は、残り少ないアルコールの争奪戦…。日没間近で雪面はかなり硬くなっている。1ピッチ滑ってもっと下まで滑りたかったが、暮れ行く空に諦めて登り返す。登り返し(シール)25分、標高差170m 

(赤岳沢枝流)
 私一人だけ偵察のため尾根に沿ってトラバースしたが、1800m地点から即フォールラインに向かって滑ったほうがずっと快適そうだった。(他のメンバーはそうした。)小屋付近からは見えない斜面で、地図だけで滑れそうだと判断してきたが、図星。 三ピッチ目下部のほうでは、雪質が少し悪くなる。1260m地点でかわいい熊の親子連れ三頭に遭遇。皆に知らせる大声に熊は急な崖に登って消えた。登り返し(つぼ足)20分、標高差180m 


【コースタイム】
5/1 喜多方7:45 −> 川入キャンプ場8:30/9:00 −> 上十五里 
    11:20/40 −> 尾根合流点12:10/25 −> 地蔵頂上   
    13:15 −> コル13:25/45 −> 三国小屋14:45    

5/2 出発6:45 −> 種蒔山手前7:45/58 −> 切合小屋8:35/55 
−> 飯豊山頂11:55/12:00 ―> 御西岳12:55/1:00−>御西小屋1:05

5/3 沢を滑る。

5/4 御西小屋6:30 −> 1820m7:20/35 −> 烏帽子9:00/35
 −> 梅花皮小屋10:10/11:55 −> 門内沢合流点 12:35/1:15
 −> 550m地点2:40

5/5 550m地点5:40 −> 温身平5:50 −> 飯豊山荘6:30/40 −>
 梅花皮荘8:00/59 −バス−> 小国9:45/10:15 − 電車−> 米沢12:02/21 


【概念図】


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