Last Update : Aug 8, 1998 概念図追加
      Nov 30, 1997
戻る



ラ・ネージュ山スキー記録集III 


  発行日 1989年12月25日

飯豊山 1                     

東北南部   石転び雪渓より                          
                         1987年5月1日〜5月5日 
                         L:岩毅、小林真人、柴崎松夫 

5月1日 晴れ後曇り
 前日深夜、関越道経由で長者原カイラギ荘の駐車場に着く。この日、長者原から入山するパーティは我々も含めて4つ。スキー組が3つに、山屋が1つ。天気は晴れ、まずは上々のスタート。しかし、行けども行けども雪は無し。温身平も春真っ盛り、肩に食い込む板と靴の重みがきつい。クネクネと夏道を歩いて北股岳が見えてきて、やっと滝沢の出合でスキーを付ける。背中が軽くなり、広い雪渓を快適にシールを利かせる。入門内沢の出合への途中にテントが数張り、石転び雪渓と入門内沢は飯豊でも有数の山スキールートだが、ここをベースにするのもひとつの手だろう。我々は翌日以降のことも考え、カイラギ小屋まで登る。ここから小屋までは標高差1000m余り、きついアルバイトとなった。

5月2日 晴れ後霧
 予報ではこの日は朝から悪天のはずだが、なぜか晴れになる。1本滑るか御西まで行くか悩むが結局御西へ向かう。快晴の稜線を左に本山、右に大日岳を望みながら行く。稜線は烏帽子周辺は雪無し。烏帽子を越えてから板とシールをつける。快適な稜線漫歩。13時、御西に着く。駒形沢を滑ろうと思ったが、この頃からガスが出てきて見る見るうちにあたりは漂白の世界。結局、この日はシール歩行だけ。

5月3日 雨後雪
 昨夜からの強い風は今朝からは雨を伴い暴風雨となる。トイレに行くのも億劫になるほど。(当時の御西小屋はトイレ無し、現在はトイレ内設。)この日、小屋にいるのは我々のほかは2パーティ5人、皆、寝るばかり。そして誰も来ない。昼は10℃もあった気温が夕方、零下になる。寒冷前線が抜け弱い冬型になり、日本海に寒気が入ってきたそうだ。その夜吹雪となり、小屋のなかも−10℃になる。

5月4日 雪後晴れ
 朝、どうせ悪天とたかをくくって寝ている。すると、9時前から次々と登山者が小屋に着く。本山から来るもの、北股岳から来るもの、いろいろ。本山なら何とかヨの声がする。どーせガスでスキーが出来ないのなら、本山ぐらい踏もう。我々3人は視界5mの漂白の世界を本山に向けて出発する。あたりは真冬に逆戻り。御西から本山の尾根はだだっ広く迷いやすい。漂白の雪原を夏山の記憶と勘と磁石を頼りに進む。10分位歩くと、向こうからボッーと黒いものが近づいてくる。それがだんだん形を帯びてきて、目前まで来ると登山者である。ここでお互い自分の位置がそれぞれ本山に向け、御西に向け、正しいことを知る。これを繰り返すうちに、強風と横殴りの雪の中、本山は近づいてくる。頂上で写真を撮り、即戻る。午後、明日の行程を考え、カイラギ小屋に戻ることにする。
天狗岳に着いた頃から皮肉なことに晴れ間が見え出し御手洗池に着く頃は快晴に。なぜか、また快適な稜線漫歩をすることになる。入山して早4日、うち晴れること3日、なのにまだ一度もスキーらしいスキーをしていない。いやシール無しにスキーを付けたことが無い。烏帽子岳からの滝沢上部は快適な斜面だが、もう午後4時。諦めて、5時前にカイラギ小屋に入る。カイラギ小屋直下、北股沢の源頭はとても気持ちよさそうな斜面、夕日があたってキラキラ光る。居ても立ってもいられない。スキーを付けて飛び込む。こんな素晴らしい粉雪があっただろうか、スキーで蹴った雪が顔に降る。
今は5月、信じられない。標高差にして、たった200m足らずだが、大きな満足感を残す。この日のカイラギ小屋は超満員、おかげで、この夜は寒い思いをせずに済む。但し隣の男女混成パーティは夜更けまで混声合唱団と化し、こちらは眠れない。ただ久しぶりに山の歌を飽きるほど聴けた。

5月5日 晴れ後曇り
 朝起きると快晴、ガッチンガッチンのアイスバーンを恐れて出発を遅らす。すべてのパーティが出払い、山スキーも2パーティが先に出る。うち1パーティはスキーを担いでアイゼンとピッケルで下りていた。7時55分、満を持して滑り出す。雪は粉雪、恐れていたガッチンガッチンはただの取り越し苦労。粉雪蹴散らして思うままにシュプールを描く。純白の世界、終わりよければすべて良しか。あまりの素晴らしい雪にどんどん飛ばす。デブリも一ヶ所、ちょっとあるだけ。入門内の出合いまで標高差1000mをたった30分。更に、滝沢出合までスキーを滑らし終わる。4日間で欲求不満がたまっていてだけに、最後のダウンヒルは何とも言えない良いものであった。但し、スキーを脱いだ後、カイラギ荘までの2時間半の林道歩きがあった。

                                   (岩毅) 

【コースタイム】
5/1 カイラギ荘8:25 −> 温身平10:20/10:40 −> 滝沢出合 11:50/
12:10 −> 入門内沢出合12:50/13:20 −> カイラギ小屋16:50

5/2 カイラギ小屋9:15 −> 御西小屋13:15 

5/4 御西小屋9:30 −> 飯豊本山10:45 −> 御西小屋11:45/12:30
 −> カイラギ小屋16:30

5/5 カイラギ小屋7:55 −> 入門内沢出合8:30/8:45 −> 滝沢出合9:00/9:35 −> 温身平10:40/10:55 −> カイラギ荘12:15


【概念図】 
戻る
山スキー同志会のホームページへ
メールの宛先:
webmaster@ysd-jp.org