Last Update : Jan 1, 1998

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 ラ・ネージュ記録集II 

  発行日 1982年10月1日 
  発行人 山スキー同志会    
  編集人 斎藤 進、川口敏博 他

ルートファインディング       

                                   菅沼 博 
 私達は雪山を自由に滑ることを目的とする、山スキーを中心として活動しております。
雪の尾根を滑ることもあれば、急な沢の源頭をルートにとることもあります。私達はそうした行為が一般の雪山登山と比べ、雪崩による危険性がはるかに高いことを常に自覚したうえで行動しなければなりません。 

 そこで私達は遭難事故防止に限らず一層の躍進のために、冬山登山に特有の危険に対する注意はもちろん、雪崩遭難に対する対策についても充分な配慮を行い、安全な山スキーを心掛けねばなりません。

 楽しく安全な山スキーを実施するためにはスキー技術はもちろん、冬山登山技術とりわけルートファインディングについての技術が重要な要素を占めると考えられます。私達は各山行の経験の積み重ねを通じ、総合的な行動技術の習得、向上を心掛けなければなりません。
 雪山行動技術の基本はルートファインディング技術の習得に始まり、終わるともいえる大変重要でむづかしい技術です。習うより慣れろと良くいわれますが、習いながら慣れて早く習得できるように心掛けてください。

 ルートファインディングは一般的に

   1.登攀時のルートのとり方。
   2.道のない尾根、沢の歩き方。
   3.雪の尾根、沢の歩き方、滑り方。

という三通りに大別することができます。パーティーを正しく安全にリードするという目的は同じであっても、1.と2.と3.とでは実施形態が大分異なっております。1.は岩場に於ける視界によるルートの発見であり、2.と3.は視界の良悪にかかわらず地形図で磁石等を利用してルートを決定する行為です。山スキーに際してのルートファインディングは3.の場合です。2.と3.は共通する要素も多く、3.の基礎は2.の道のない尾根、沢の歩き方にあると考えられます。 ここでは2.及び3.のルートファインディング技術の習得方法について簡単に記すことにします。
 ルートファインディングに限らず、全ての技術習得に際して共通している最も重要な要素は本人の”ヤル気”にあります。計画性と目的意識をしっかりと自覚して経験を積み重ねることが大切です。
 最も基本的な技術は読図技術にあります。これは無雪期、積雪期とも共通する重要な要素です。地形図に慣れることが大切です。ルートファインディングは山行計画から始まります。地図を読み、地形を覚え、ルートを想像しながら山行を組み立てていくという具合です。私達が行う山スキーでは、単に山スキーを楽しむことだけにとどまらず、地形図を利用して未知の山域で山スキーを行うことも大きな要素です。ただこうした山行の立案者はリーダー自身である場合が多く、メンバー側の責任(義務)として、計画されたルートを事前に把握しておかなければなりません。こうした努力を抜きにしての技術習得は考えられません。

 それぞれの山行に際してどのような努力、注意が必要かといいますと、

   1.地形図は1/2.5万又は1/5万(状況による)を使用し、事前に
     調べられる範囲で地名を記入し、同時に磁北線を記入しておく。
   2.大まかな地形を把握しておく。
   3.行動中は地図、磁石を良く見て常に現在地の確認を心掛ける。
   4.勘に頼らず、地形図と実際の地形とが必ず確認できる高い場所(山頂 
     等)に登り、ルート上に目標物を設定し、それに向かって行動する。

などがあげられます。1.〜3.は山登りをする者の基本的な心構えであり、地形図の尾根線と谷線を写して地形線図を作り、大まかな地形を頭の中に入れたうえで山行に臨むことが大切です。4.は基本に忠実に行動せよということで勘に頼って行動すると、時として非常に手痛い失敗をすることがあります。特に下降時の広い山頂ではルートを間違えやすいことを良く知っておかなければなりません。 

 一般的に山スキーでの行動は視界がある時の滑降が中心です。こうした状況下での行動中は、特にルートファインディングに神経をわずらわされることもあまりありません。
しかし、滑り出しの時には必ず地図を見てルートを確認することを習慣づけて下さい。

 実際の山行では吹雪の時もあれば、ガスの中ホワイトアウトになってしまうこともあります。そこで荒天時のルートファインディングの成否が山スキーの安全に係わる大きな要素になっております。

 最近は高度計が普及したため、ガスの中でも比較的容易に現在地の確認ができるようになりました。 しかしこれは地形が単純な場合に限られ、複雑な地形の中ではルートファインディングはほとんど不可能です。こうした荒天時の行動は大変むづかしく、基本的には行動を中止しなければなりません。不用意に行動しますと現在地がわからなくなってしまいますし、元の場所へ戻れなくなることもあります。動かずに天候の回復を待つ事が一番です。こうした時にはコーヒーの一杯でも飲むくらいの余裕が大切です。 
また地形が単純で行動をする場合でも、慎重にルートを決定し、パーティーは離れずに行動しなければなりません。横滑りが中心になりますが、シートラーゲン時の判断についても気を配らなければなりません。引きかえす勇気、行動を中止する勇気を持って行動することが必要です。

 最近は山スキーを行う仲間が増え、山の中にも先行シュプールがあることが多くなっております。その時安易に先行シュプールに従うことは厳につつしまなければなりません。たとえ先行シュプールに従う時でも、必ずルートを確認しながら行動することが重要です。安易に先行トレールに従い、大変危険な体験をしたパーティーが非常に多いということを認識しておかなければなりません。

 ルートファインディングの第一歩は読図力にかかっております。いつでもどこでも地図や磁石がすぐ出せるように工夫して山行に臨んで下さい。

<参考図書>
・8 地図と地形の読み方 前島 孝夫著 山と仲間ブックス  ユニ出版 
・7 地図と地形     石山 尚著  登山教室シリーズ  山と渓谷社
・山と渓谷 11−77 470号 地図とコンパス 
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