Last Update :Jun 27, 1999 概念図追加
Mar 2, 1998
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 ラ・ネージュ記録集II 

  発行日 1982年10月1日 
  発行人 山スキー同志会    
  編集人 斎藤 進、川口敏博 他

大水上山                     

奥利根 / 丹後山より平ヶ岳                      
                            1981年5月2日〜5日 
                    メンバー:L.菅沼、小森宮、長谷川、橋爪 

5月2日(土) 晴れ

 前夜上野を出発し六日町駅で仮眠を取る。ゴールデンウイークなので電車も駅も満員で少し寝不足気味だ。タクシーは出払っており1台もいない。バスの時間を確認したりしてブラブラしていると、ちょうどタクシーが来たのでそれに乗り野中の少し先まで入る。
 スキーをザックに着けて出発する。無雪期なら気楽な林道歩きなのだが残雪が道を覆っており歩きつらい。途中からはピッケルを持ち慎重に進む。十字峡から先は本谷が残雪に埋まっており雪の上を進む。所々に大きなデブリの跡があり不気味だ。途中右手の沢からブロックが落ちてきて少し驚いた。
 西尾根の取り付き点がよくわからず、栃の木沢左岸の道を少し辿り右手の急な雪の斜面に付けられた踏み跡を登る。(正規のルートは本流を少し登り取り付くらしい。)末端から急登が続く。正規のルートではないためスキーが引っ掛かり登りつらい。途中右へトラバースして正規のルートに合流する。
 どこまでも急登が続く。森林限界を過ぎると稜線も間近に見える。トランシーバの交信によれば稜線は風が強いらしい。稜線が近くなると風が強くなり、ザックのスキーが風を受け荷物が重く感じなかなかはかどらない。傾斜がゆるやかになると稜線だ。矢口代表が迎えに来てくれていた。
 天気が下り坂なので源流への滑降を明日に変更し、丹後山山頂の避難小屋に泊る。天気が悪いため満員だった。この2階建ての立派な避難小屋が群馬県の土地に建てられているらしく’81年に壊してしまうとのことで残念だ。

【コースタイム】
野中 6:35 → 十字峡 8:05/20 → 栃の木橋手前 9:25/40 → 920m 11:25/50 → 丹後山 15:20 


5月3日(日) 晴れ後雨

 今日は朝からガスだ。早朝に出発する矢口パーティーを見送り、我々も一応出発の用意をする。次第にガスが薄くなり上空が明るくなる。今日の予定は利根川源流を滑り平ヶ岳までだ。あまりゆっくりもしていられずガスの中を出発する。丹後山の三角点を踏んで次のコルへ早速滑る。ガスの中なのであまり離れないように滑る。大水上山の手前でガスが晴れ、利根川源流はもちろん遠くに平ヶ岳の姿も見える。目の前には中の岳が堂々と聳えている。大水上山は兎岳にダブってしまい良くわからない。あっけなく山頂に着いてしまう。 
 高曇りの中を十分な展望を楽しむ。山頂直下の丹後山寄り稜線でスキーを着ける。数年来の希望だった利根川源流滑降を目前にして感慨もひとしおだ。大水上山は小さな目立たない山だが、直下の利根川は扇状の大斜面を従え、我々には大きな山だ。稜線直下は少し急なので一回斜滑降を行い連続滑降に移る。この一回の斜滑降の程度が問題でトップはいつも損をする。今日の雪はザラメで最高だ。すぐに適当な傾斜となり扇状の大斜面を思い思いに滑る。滑ってしまうとあっけなく大斜面も終わり沢幅が狭くなり、振り子状の沢の中を滑る。
 大水上山1830mから2万5千分の1地形図の東小沢の沢の字1350m付近まで滑る。標高差480mの沢の滑降を楽しんだ。この辺は両岸からのデブリが押し出されており滑りつらい。ここから下は快適な滑降が期待できそうもないので左岸の雪面をキックステップで登る。すぐ上に稜線が見えるのだが、稜線までの標高差約280mに小一時間かかってしまった。
 稜線は広い雪の尾根で、コモさんはシールで快調に登る。この頃から太陽が照り始め汗ばんでくる。雪も腐り始め歩きつらい。藤原山は南側を巻き気味に滑る。下藤原山への稜線は所々雪が崩れ落ちており薮の中の道を登る。下藤原山の山頂には雪がなく、乾いた山頂で大休止をとる。越えてきた大水上山が遠くなり、代わって行く手の平ヶ岳が大きく迫ってきた。
 ここからは稜線に雪がなくドロドロの道を登る。ザックに付けたスキーが重く、木の枝に引っ掛かったり苦労する。滝ヶ倉山からは再び雪の稜線を登る。この辺りから風向きが変わり会津側からガスがかかってきた。剣ヶ倉山の頂上に着いた時には完全にガスに包まれてしまった。ここでルートは直角に左に曲がる。少し急な剣ヶ倉山直下を慎重に下る。
稜線は狭く両側が落ちているようだがガスのため良く見えない。平ヶ岳への登りではシールを使う。雨具を着け小雨の中を登る。展望もなくただひたすら登る。さすが平ヶ岳と言うことだけあって山頂付近は平らでどこが山頂だか良くわからない。最高点らしきところを山頂と決め雨の中の写真を撮り先を急ぐ。
 シールを外し、広い平らな山頂を後にする。小雨の中視界は30m位あり、先行パーティーのシュプールがはっきりしているので、ガスの中での滑降にしては比較的快調に滑れる。急な所はなく一気に白沢山手前のコルまで滑り込む。今日はここまでとし、水長沢側の樹林帯の中にツェルトを張る。夜半には台分雨が降ったようだがフライもあり快適な一夜を過ごした。

【コースタイム】
丹後山 6:55 → 大水上山 7:30/55 → 1350m 8:10/30 → 稜線 9:15/30 → 下藤原山 11:30/12:30 → 滝ヶ倉山先 13:30/45 → 剣ヶ倉山手前 14:35/50 → 剣ヶ倉山 15:20 → コル 15:30/45 → 2070m 16:20/35 → 平ヶ岳 17:05/15 → コル 17:25


5月4日(月) 曇り後晴れ

 今日も曇りだ。スキーを着けて出発する。早いパーティーが平ヶ岳へ登って来る。階段登高で小さなコブへ登る。振り返ると平ヶ岳から続く尾根が良く見える。丸みがあり広い尾根でさすがスキーの山と言う印象を受けた。天気が良い時に滑ればきっと爽快だろう。白沢山へはスキーを引いて登る。この山も丸い平らな山頂だ。大白沢山との分岐までは小さなコブを幾つか越えるが、思っていたより少し長く感じた。分岐付近は広い所で天幕が幾つか張ってある。ここから猫又川へ直接下るシュプールが残っているが、下の原の歩きが長そうなのでススヶ峰へ向かう。ススヶ峰手前のコルまで滑る。風のため尾根の雪が波打っており滑りづらい。途中で会員の馬場氏と会う。平ヶ岳を往復するとのことだ。
 すっかり天気が良くなり、大汗をかきながらススヶ峰の頂上に登る。楢俣川側に白い大きな斜面を持つ赤倉山が立派に見える。ススヶ峰から傾斜のない尾根を日崎山手前のコルまで滑り、そこから猫又川へ下降する。ほんのわずかで狭い沢となり猫又川の本流に出ると傾斜がなくなってしまう。
 長い平地滑降もムジナ沢出合いを過ぎると山の鼻だ。大休止をとりゆっくりと休む。 鳩待峠へ川上川沿いの道をシールで登る。ワル沢の出合いを過ぎると峠への登りとなる。今日は鳩待峠までとしツェルトを2つ張る。早速ビールを仕入れ乾杯した。

【コースタイム】
コル 7:50 → 白沢山 8:20/25 → 1920m 9:15/30 → ススヶ峰 10:45/11:00 → 猫又川 11:50/12:25 → 山の鼻 13:00/14:00 → 鳩待峠 15:20 


5月5日(火) 快晴 

 今日は快晴だ。午前中に至仏山を滑り下山することにして早めに出発する。昨日の冷え込みでアイスバーンになっている。山頂からは越えてきた山々が遠くに見える。山頂には大勢の人が登って来る。
 スキーを着け山頂直下から滑り出す。このワル沢は上部3分の2は完全に無木立の大斜面だ。先行者のシュプールもなく思う存分広い斜面を滑る。快調に飛ばしワル沢出合いに滑り込む。
 ワル沢出合いからは昨日の道を鳩待峠へ戻る。峠からはタクシーで沼田へ直行し、無事山行を終了した。

【コースタイム】
鳩待峠 5:30 → 至仏山 8:40/55 → ワル沢出合 9:15 → 鳩待峠 9:10/10:10 → (タクシー)沼田 11:45 


記:菅沼、電子化:作野 


【概念図】

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