Last Update : Apr 24, 1999 概念図追加
Jan 18, 1998
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 ラ・ネージュ記録集II 

  発行日 1982年10月1日 
  発行人 山スキー同志会    
  編集人 斎藤 進、川口敏博 他

八幡平(2)                

東北 / 乳頭温泉より玉川                   
                         1981年4月30日〜5月3日 
                 メンバー:(L鈴木(清)、佐々木)、鈴木(利) 

4月30日(木)乳頭温泉 → 滝ノ上温泉 雨  

 雨の為、乳頭温泉のバス停で天候の回復を待っていた。遅くなったが、雨も止んだので出発することにした。孫六湯から田代平に直接突き上げる尾根をルートに取った。孫六湯の裏の急斜面を登りきる頃ようやく雪が出現してスキーをはくことができた。この頃から再び雨になり、次第に本降りとなって風とガスを伴うようになった。斜面は幅広で傾斜も緩く、雪の状態に恵まれればスキー向きである。稜線に出てポール沿いに進むと、間もなく赤い屋根の田代平山荘に着く。
 一時間ほどすると視界がわずかに利き、風も収まってきたので、滝ノ上温泉へ向かうことにした。雨は依然と降り続いているので、乳頭山の北側を巻いてP1428へ直接出た。既に雪の消えた這い松のピークを過ぎると、無立木の適度な傾斜の広い斜面だ。250m程雨の中でも結構楽しむことができた。
 キックターンを何回か繰り返してまだ雪に覆われた白沼に降り、そこから古い標識のあるブナ林の中を林間滑降した。地熱発電所の見える900m頃から雪が消え始めた為、夏道を重い板を背負って一気に滝ノ上温泉に下った。今日から開いたという鳥越山荘に泊り、濡れたものを乾かした。
 乳頭山から八幡平へ縦走する人が普通利用しないだけに、静かで十分に楽しめるルートだと思う。夕方、翌日から同行する人が着いて全員揃った。

【コースタイム】
乳頭温泉 7:30/9:50 → 田代平山荘 11:40/12:50 → P1428 13:40 → 白沼14:20 → 900m14:40 → 滝ノ上温泉15:20


5月1日(金)滝ノ上温泉 → 大深山荘 雨後晴れ

 今日こそは好天が期待できると思っていたらまだ雨が降っていた。雪の消えた夏道を一時間歩き、P882を越えた頃ようやく雪が現れた。シール登高向きの斜面を三ツ石山荘まで登るが、天気は依然と悪く、霧雨で視界の利かない中、小屋を発見するのに手間取った。小屋は広く、こぎれいで気持ちよい。
 天気予報によると、下界は晴れているらしいが、山間部で回復が遅れているそうだ。お昼まで待ったが視界は相変わらず悪いので、予定の栗木ケ原は断念して、平凡に稜線上を大深山荘まで目指すことにした。
 三ツ石山の南斜面は樹木もなく、スキーに良い斜面であるが、頂上から反対側の斜面には雪が全然ついていない。その後P1448と小畚山の南面のみスキーが使えたが、大深岳へのコルまでは雪解けと雨でぬかった夏道を歩いた。大深岳の広い斜面をシールを滑らせていると、ようやく雲が切れてきた。今まで辿ってきた方面を見ると、稜線上の夏道に雪がなかったところも東面にはべったりと着いている。
 大深岳の山頂は広くて迷い易いが視界が利いてきたので、シールを外し針葉樹の林間滑降に移った。するとそこには一気にベールを取った青空が広がって、小屋もすぐに発見できた。

【コースタイム】
滝ノ上温泉 6:30 → 三ツ石山荘 9:45/11:50 → 三ツ石山 12:20/30 → 小畚山14:05 → 大深岳15:35 → 大深山荘16:10


5月2日(土)大深山荘 → 後生掛温泉 晴れ

 待望の晴天である。早々と出発した。八幡平は昨日のように稜線を辿るだけでは満足な滑りをうることはできない。当初の計画では両面の北の又沢を992mの出合い付近まで滑り込み、仮戸沢寄りに嶮岨森の北側へ登り返す予定であったが、西側斜面は雪が消えて黒々としている。一方、東側は短いが雪も豊富で木の無い好斜面が多い。そこで滑降斜面を適当に選択しながら、東面を滑って登り返すということを何度か実施した。
 まず、嶮岨森の手前の鞍部から東面の鏡沼めがけて滑った。急斜面であるが、ガラス雪で、思ったよりスピードコントロールができ快適だった。稜線から100m下っただけでそれまでの強風もなくなり、沼のほとりでは汗ばむほどだ。広い斜面を空身で登り返し、再度滑りと眺めを楽しんだ。沼からはシールを着け、嶮岨森の麓をトラバースし、滑降した標高よりはるかに少ない労力で北側の鞍部に出た。
 諸桧岳の手前のP1482から広がる東面もスキーに良さそうである。上部30度以上の無立木の斜面を雪庇のところから樹林帯まで130m程、ザラメ雪を蹴散らして下った。再びシールでトラバース気味に登ると諸桧岳の大きな緩いスロープに出る。名の通り一面桧の疎林で、だだっ広くピークも判然としない山だ。山頂付近で休憩し、次に滑る斜面の詮索にかかった。
 その結果、畚岳の東側の広い尾根を空身で滑ろうということになり、コルから畚岳の東面1400m位までトラバース気味に下り、林の中にザックを出歩下。中傾斜の木の無い大斜面を100m程登ると台地状のところに出て、畚岳直下で夏道とぶつかる。最後の急登もシールでこなし、風の強い頂上に立った。明日のルートの焼山の麓まで雪があるようなので安心する。
 さて、シールを体に巻きつけ待望の滑降に移る。夏道までの狭い急斜面は恐怖心が去来したが、滑ってみると一滑りであった。台地の外れから、今シーズン最高の滑りを満喫した。180mの高度さの往復にもそれほど時間がかからず、稜線からわずかに外れただけで自分達だけの静かな世界を独占できた。春の日だまりで紅茶を沸かし、午後の為に活力を貯えた。
 小尾根を回り込み沢沿いに少し登り、畚岳の北側へトラバースする。温泉の湧き出る谷間を眺めながら、たいした登りの無いまま夏道と交差した。車道を歩いて八幡平頂上バス停まで行くと、スキーヤーと観光客と車であふれていたので、早速シールで八幡沼とガマ沼のほとりに達した。立派な小屋があるが、翌日の下り坂の天候を考慮して晴天のうちに少しでも行程を伸ばそうと後生掛温泉まで下ることにした。
 八幡平の頂上を経て、県境上の1600mのピークから秋田県側のアスピーテラインにほぼ沿った緩斜面の林間コースをスキーヤーに混じって下った。蒸けの湯との分岐点で車道に出て、大深温泉を回り込み車道が最も南になるところで再びスキーを着けて、後生掛温泉の南側の大湯沼まで滑った。別府を小規模にしたような温泉の湧き出ている畚岳中を抜けて、湿地の対岸にある針葉樹林帯の中にテントを張ることにした。三方を水芭蕉の咲く沢に囲まれた小高い台地で、木の間から温泉が眺められるという他では味わえない恵まれた宿泊地となった。

【コースタイム】
大深山荘 6:00 → 鏡沼 6:50/7:10 → P1481 8:30/35 → 諸桧岳 9:50/10:15 → 1400mデポ地 10:55/11:00 → 畚岳 11:30/35 → 1400m 12:00/50 → 八幡平頂上バス停 13:40/14:05 → 八幡沼 14:25/40 → 八幡平頂上 14:45 → 大深温泉 15:50/16:00 → 大湯沼 16:40 → TS 17:00


5月3日(日)後生掛温泉 → 玉川温泉 晴れ後曇り             

 天気が下り坂なので、早めに出発した。朝から曇り空と思っていたが、まだ晴れ間が見える。大湯沼の西側から水芭蕉を鑑賞しながら、小尾根を西に進むと数分で鹿角市と仙北郡の境界尾根にぶつかり、ここから西南西の方向に焼け山〜玉川温泉までのルートがほぼ一直線に並んでいる。国見台の東斜面で広葉樹から針葉樹林帯に変わる1150m地点から振り返ると八幡平や畚岳がよく見えるようになる。国見台まで一時間で登ることができたが、後方の山々には早くもレンズ雲が出てきて、天候の悪化を告げている。
 国見台の林間滑降は短いのでシールのまま下る。毛せん峠付近の印象的な枯れ木の間を抜けると、栂森まで広い斜面が広がっている。山頂周辺は雪が消え、這い松、杉苔、石楠花の草原となり、残雪の白と緑のコントラストが新鮮に感じられるところだ。この山を越えると、八幡平とは全く雰囲気の異なる景観が展開されている。両側が切り立った険しい岩肌を見せており、噴火口のような異様な沼を持つ鬼ヶ城周辺は、人を寄せ付け難いところだ。そんな中で、湯ノ沢の源頭部だけ滑降欲をそそられる。P1354から焼山までは夏道を離れ、比較的狭い稜線上をシールで登った。山頂は広く、周辺の大展望を楽しめる。
一番高い岩手山の上空には立派な笠雲がかかっており、既に曇りとなってしまった。しかし、あとは下るだけなので気が軽い。
 山頂直下の夏道沿いには雪が無いので、南西の方から回り込んで雪を拾いながら滑り始めると、古い指導標が出現した。その後は指導標に従って、適度な傾斜が続くブナ林の中を雪を蹴散らして飛ばして行った。距離も長く、結構滑り応えのあるルートだった。東京方面では知られざるクラシックルートと行った感じである。
 玉川温泉入り口のバス道路まで滑ることができ、車道を歩いて15分ほどで温泉に着いた。酸性のお湯に入り、心地よい陶酔感に浸って外に出ると小雨が降ってきた。雪崩の危険防止でバスが入らないので、タクシーで八幡平駅へ出た。

【コースタイム】
TS 5:55 → 国見台 7:00 → 栂森 7:30 → 焼山 8:25/9:00 → 車道 9:55/10:00 → 玉川温泉 10:15/12:00 → 八幡平駅 12:30


記:鈴木(利)、 電子化:作野 


【概念図】



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