立山
メンバー L:吉岡 M:菅澤、田中(秀)、川島
2019年11月21日 快晴 室堂−雷鳥荘-新室堂乗越周辺―雷鳥荘 9:55 室堂 ターミナルをでると満開の雪花(ゆき)がわたしたちを歓迎してくれた。わたしと川島さんは"お願いします"と雄山に一礼し安全を祈願する。室堂平周辺の山も良さそうだが、宿に向かい荷を軽くしてからの登行に変更した。雷鳥荘までシャッターを押しながら雪花見ハイキングをしばし楽しんだ。紺碧の空からの風が心地よかった。 11:21雷鳥荘 2375m 宿直下のスロープは初滑りの舞台となる。オフシーズン中、菅澤さんはケガ、田中さんは故障と向き合っていた。試運転はプラスαの緊張と集中を強いられているに違いない。体を落とし込んだ先はやわらかかった。一本目にかける思いはメンバーそれぞれ。久しぶりの感覚を楽しんだ。 11:48称名川 2264m 橋を渡ると称名川の下流からBCスキーヤーと出会う。新室堂乗越方面を指さして 「東面良かったですよ」 出会う人の情報はとても大切だ。雷鳥沢ルートの途中から西進し件の斜面に到着する。フォールラインは5本あったが、いずれも深く刻みこまれている。滑り手の想像力を引き出すには十分であった。 「美味しいところ先にいっていいですか」 「そりゃ、リーダーの特権さ。どうぞ」と菅澤さん。見習いだがリーダーはやってみるものである。菅澤さん、田中さん(写真)、川島さんが続いた。ガイドブックにはない場所、入山日の穴場だと思った。戯れた斜面の余韻を残しながら宿に帰還した。 14:33 雷鳥荘 301号室の窓から雷鳥沢、ベランダから桃色に染まる雄山、そして温泉ではドーンと鎮座する大日岳を名画を見るように観賞した。口あたりのいい地元産ワインは菅澤さんの誕生日に彩を添え、暖炉の薪火は会話のトーンをまろやかにする。雷鳥荘はバックカントリー基地に相応しいおもてなしを提供してくれた。 2019年11月22日 晴れのちくもり 雷鳥荘-大走り-雷鳥荘+雷鳥沢東面 7:42雷鳥荘 2375m 曇りの予報だったが好い天気となった。風はほとんどない。称名川までのルートは昨日と同じだ。大走りのとりつきからは急登となり、陽のあたらない斜面は、兔も足跡をつけていない。クトー、エッジを面に食い込ませてすすんでいく。登行や滑走のトレースはない。もしかしたら今シーズン、大走りの初滑走はYSDかもしれない。 10:44 2662m 真砂岳の直下は風が強く雪はあまりついてない。今日はこのあたりから滑ろう。 ブーツをビンディングに押し込む音はモチベーションを加速させる。 「また、先にいっていいですか」 「そりゃリーダーの特権だよ!」と田中さん。ではお言葉に甘えてドロップダウン、 フォーッ!! ノートラックを存分に楽しませてもらった。菅澤さん、川島さん(写真)も気持ちよさそうだった。田中さんは「サイコー!!」と声をあげて合流してきた。 11:05 2362m 大走りのとりつきまで降りてきてしばし休憩タイム。菅澤さんと田中さんは雷鳥荘に戻るという。称名川に向かう二人の後ろ姿は一徹の滑りを終えた貫禄が漂う。実にかっこよかった。 川島さんとわたしは、まだ早いため雷鳥沢方面に向かうことにした。沢の東は滑走者や登山者はなくとても静かだった。冒険するのは子供のころから大好きである。 12:29 2527m 岩が少しずつ増えてきたので滑走モードに入る。猫の額のような場所でビンディングを押し込んだときわたしは後ろにすっ転んだ。ひとりだとリカバリーに相当時間を要す急登だった。「雪山は危ないんだよ」と立山からお灸をすえられた格好だ。 ノントレースの綺麗な斜面だったが雪花は板にまとわりつき自由なテールスライドを許してくれなかった。今日は花弁を閉じてしまったようだ。 称名川まで戻ってきたとき川島さんが 「山崎カールも行かない!?」 もう、雪花は終わりと決めていたわたしと、まだ旬のお 花畑はあるかもしれないというこころざしの差はとても大きいと思った。時計は13時を廻っていた。 「宿に帰ってコーヒーでも飲みませんか」とわたし 「そうしましょう!」川島さんのことばはいつも明るく前向きである。 部屋にもどると菅澤さんがうたた寝をとおりこし熟睡していた。今日もお疲れさまでした。 2019年11月23日 晴れ 雷鳥荘-雷鳥沢-雷鳥荘-室堂 7:40 雷鳥荘 晴天が続いたせいか宿直下のスロープは食べ物にたとえるとガリガリ君であった。慎重に滑り込む。雷鳥沢とりつきの緩斜面からクトーをくいつかせる。まだ雪花は固く閉じているようだ。先行するシールのみのスキーヤーは登り切れずずり落ちて転倒していた。 やがて朝の斜光が照らしだすと雷鳥沢の雪花が白みを帯びひらきはじめるのがわかった。 9:36 2635m 行く先にハイマツが見えてきた。滑りごろの大斜面を眼下に、ここで満開まで少しまってみよう。田中さんはその間、劔をみてくるという。 待つこと40分。菅澤さん(写真上)は雪花の感触を先に試しにいく。滑走音は柔らかくそろそろ滑りごろを迎えたようである。 劔の姿をみてきた田中さんが戻ってきた。 さあ、行こう。 わたし(写真下)の頭の中で "VAN HALEN"がサウンドする。 あっという間に雷鳥平まで滑ってきた。 「おーい、ちょっとは休ませてくれよ。 ハハハツ」と田中さん。そういえば試運転中だった。ごめんなさい。 14:51扇沢 駐車場までもどってきた。山に向かって、 3日間の好天と安全に御礼を言う。 そして何よりもリーダー見習いを山行中、適切な判断と助言でサポートいただいた3名のみなさんに 「ありがとうございました」 雪花の前線はこれから高度を下げ全国に南下していく。いよいよシーズンがはじまった。 (文:吉岡) |