Last Update : 2019/07/13 戻る

ノルウェーの山スキー(その9):ノルウェーナルビク北極圈山スキー      

 

 岩 毅(記・図表・編集)、菅澤秀秋(記)、加瀬幸男(記)、田中秀和(記・写真)、川島千春(記・写真)、立田好夫(記・写真)、樋渡利隆(記・写真)

 

2019年2月の『ノルウェーナルビク北極圈山スキー』について報告する。写真は本文のあとにまとめて配置したので適宜参照願う。また、特に別記ない文は岩執筆文である。写真には番号を付っていないが、頁の若い方から1から10とする。地図は各山行報告中にWEBを記したので参考にしてほしい(WEBを開き真ん中右の「Kart」をクリックすると地図が出る)。

 

参加者;岩 毅(L、企画立案)、菅澤秀秋(SL)、加瀬幸男(食料)、田中秀和、川島千春(食料)、立田好夫(会計)、樋渡利隆(全7名)

期間;出国2月21日(木)〜帰国3月3日(日)

 

2月21日(木) 東京-ナルビク  

 

今回初めてバンコク経由でナルビクに向かう。いつもは、東京―欧州直行便に乗りフランクフルトやコペンハーゲンで乗り換え同日夜にオスロ空港に着き、重い荷物を持って一旦オスロ空港近隣のホテルに泊まり、翌早朝の国内線に乗る。このオスロのトランジット泊が面倒だった。そこで、今回試しに、早朝オスロ空港に着くタイ航空のバンコクーオスロ直行便を利用して、オスロ空港でのトランジット泊を省いてみた。なお、オスロに直行する大陸間フライトがあるのは、このバンコクやニューヨークなどごくわずかである(日本からオスロ直行便は無い)。

結論から言うと、やはり、飛行時間が、東京―欧州直行便に比べて5時間強も長くなり、狭いエコノミー席では、この5時間プラスはオスロのトランジット泊よりきつかった。まあ、次回は、いつもの東京―欧州直行便を使うでしょう。

さて、岩は全日空で、他の6名はタイ航空でバンコクに向かった。タイ航空は、総2階建てのエアバスA380だったようだ。席は他の機種に比べて広めだが、どこの空港でも機体が巨大なため空港ビルの端に着く。このため、バンコク空港でも空港内移動が長くなり、全日空のほうが30分遅着だったが、(同空港の)オスロ行ゲートには岩のほうが早く着き、先につくはずの6名がだれもいない。何かあったのかなと一瞬不安を覚えたが、早々、みなさん集まってきたのでホッとした。

今回往路は、バンコク空港もオスロ空港も、あまり余裕時間が無く、もし遅延が発生すると厄介なことになる。とくにオスロ空港が心配だった。

が、幸い、タイ航空954便はオスロ空港に40分も早着の6時10分に着く。しかし、南国タイ、バカンス帰りのノルウェー人ばかりで、すんなりイミグレ通過と思ったら大間違いで、出稼ぎの中国人が多い。どの中国人もイミグレで管理官に止められて列が進まず結構時間を取られる。また、オスロ空港国内線のスキーの預け方も変更されていて、これも手間取る。40分の早着が無かったら乗継ぎに失敗していたかも。

まあ、でも、なんとか、無事、2月22日(金)朝10時すぎ、ナルビク空港に定刻で着いた。

以下、記録欄の、-は車、=バス、##は鉄道、**は空路、>>はシール登行、++アイゼン登行、〜〜は滑降、・・・は歩行を示す。記録は岩の実行動時間で示す(岩が同行していないルートでは報告者の時間を示す)。

 各日各項目特記がなければ、参加者は、菅澤、加瀬、田中秀、川島、立田、樋渡、岩の各位全員参加である。

 

2/21 自宅1135晴・・・1147鶴川1154##1159新百合丘1202##特急##1227新宿1240##成田エクスプレス##1356成田空港第一

NRT1735 晴 **NH807**2230 BKK 2430 薄曇 **TG954**

2/22 610 OSL 830 雪**SK4082**1015 EVE 雪

 

2月22日(金) 買出し・準備  曇一時雪 写真11、写真12

 

まず、空港で予め予約しておいたレンタカー2台を受け取る。AVISで、1台はTOYOTA-RAV4 、もう1台はスバルXVだった。

この日は当初二手に分かれて、1台はロケハンの予定だったが、翌日から雨模様のため、雨天日にロケハンを行い、今日は買出しと準備に専念とした。

まず、これから1週間の宿となる、ナルビクから東に40kmのところにあるBallangen Campingに向かう。

Ballangenまでは空港から1時間強だが、景色はまさしく冬。どこも真っ白で、どこでも山スキーができそうな感じ。このまま雪景色ならば良いのだがと祈るも、予報どおり、このあと、とんでもないことに。

道路は以前と変わらないと思っていたら大間違い。トロムソへの分岐点Bjerkvikをすぎると新道ができていて、巨大な橋(写真12)を渡るともうナルビク市内。ビックリだ。なお、この新道は有料で、かつ、自動チェックのため、帰国後しっかり有料代金を取られた(1回70NOK)。

(写真12の中央やや右に写ってういるのがナルビクスキー場である)

Ballangen Campingは2011年にも使っており、その時も使い勝手が良かったので今回も使うことにした。また、定員9名、冷蔵庫、オーブン、洗濯機、シャワーのある大型コテージが新築されており、これもここを選んだ理由。ただ、定員9名だが実質は7名が限界だろう。また、シャワーは予想通り7名ではお湯がもたず、岩は朝シャン、一部の人は離れのシャワー棟利用でしのいだ。暖房は、電気ヒーターと暖炉併用で暑いくらい。

洗濯機がたいへん重宝した。2011年は、離れの洗濯棟に行かなければいけなかったので、結構面倒だったが、今回は、ドラム式洗濯機、かつ、強力乾燥機もありで、不自由なしだった。

午後1時、予定通り、キャンプ場に着いたが、2011年5月と異なり、オフシーズンなのかレセプションは閉まっている。結局、オーナーの家に直接伺ったら、オーナー家の隣の大きなコテージの玄関に鍵がついていて、そのまま、入っていいよ、と。まるで日本並みのセキュリティの甘さ。

コテージは前述したとおり、いや、実際それ以上に立派だった。加瀬さんと私は2011年の記憶があるので、それなりに期待はしていたが、期待以上だった。

屋根裏も入れると寝室は3室。入口左横の1人部屋を川島さん用として、リビング手前右の4人部屋に菅澤さん、加瀬さん、田中秀さん、樋渡さん、相対的にやや若い、立田さんと私が2階屋根裏となった。

部屋確認後、改めて、ナルビク市内(写真11)に買出しに行く。市内まではE6(欧州基幹国道6号線)で40分ほど。このE6はオスロからノルウェー北端まで南北に縦断する基幹国道、日本で云えば、さしずめ東海道・山陽道というところ。Ballangen Campingはその基幹国道沿いにあるわけだ。ただし、基幹国道と云っても、片側1車線、特段分離帯も無い普通の道。ナルビク周辺ではもっとも車の通行が多い道だが、週末早朝などは数十分間、通行無しの場合もある。

で、スーパーはBallangenから行くと、ナルビク港に入る手前、橋を渡る手前の、海側に、KIWIとRIMA1000があり、そこがもっとも便利だった。

夕食は、川島シェフ、加瀬シェフのおかげで、毎日、すばらしい食事だった。感謝である。やはり、美味しい食事が、翌日の山行の力の源である。

  

2/22 Evenes空港 小雪1145-Ballangen Camp1300(片付け等)雨1410-1430 Narvik(買い出し)1550-1610Ballangen Camp

 

2月23日(土) Bjornfjell 760m 登頂 曇  写真10

https://peakbook.org/peakbook-element/14194/Bjørnfjell.html

今日は、予報どおり、気温が上がりどこも雨。そこで、標高高く、大西洋からも離れるスウェーデン側に行くことにした。

ノルウェーに雪が多い理由は、暖流のメキシコ湾流の上を北極から流れてくる冷たい西風が吹き、この風がスカンジナビア半島の脊梁山脈にあたり、大西洋側に雪が降る。この原理は日本の日本海側と同じ。したがって、半島に直行して大西洋から離れスウェーデン側に行けば天気は良くなる(雪も少なくなるが)。

昨日走った新道を空港方向に向かい、ロータリーを右折してスウェーデンに向かう。標高が上がるも、なかなか、雨は止まず、雪になることも無い。国境手前でようやく雨が止む。と、前方を望むとRiksgransenのスキー場が見えるがリフトが止まっている。強風のせいのようだ。たしかに、雨は止んだが風がかなり強くなってきた。さらに、国境を越えた途端、道路が完璧なアイスバーンに。ノルウェー側の国道は砕氷等のメンテを行っているが、どうも、スウェーデン側は何も行っていない模様。これでは、とても危なくて、我々の運転技術では、さらに、天気を求めてスウェーデン側に入るのは難しそう。

というわけで、今日は仕方なく、国境間際で、かつ、国道から登れるBjornfjellにした。

標高差300m弱だが、頂上付近は超強風で、意外に達成感あり(写真10)。滑降開始するころには、次第に視界がなくなり、国道の車が走る音を頼りにおそるおそる下る。間違って国道とは反対側に下ると、そこは数百kmに及ぶラップランドの凍土地帯。とても生きては戻れなくなる。

2/23 Ballangen Camp 800 – 900 Riksgransen - Tullstn Car Parking 930 曇 >> Bjornfjellet 1100 霧強風〜〜 1200 Tullstn Parking 雪 – 1300 Narvik (買い物等) 1540 – 1600 Ballangen Camp 曇

 

2月24日(日) Tverrfjellet /839m 600m付近で断念  曇  写真7

https://peakbook.org/peakbook-element/10195/Tverrfjellet.html

今日も引き続き荒天。スウェーデン側は道路氷結で難しい。予報ではトロムソのほうが若干良さそうなので、今日は北に上がってみる。しかし、どこまで行っても雨、雨、雨。ほとんど雨天のロングドライブ。結局、遠路200km走りSenja島へ。この島で狙っていたSanfjelletに行く道は入口で通行止めの標識。あきらめて帰ろうかと思ったが、どうせダメ元、もう1か所、Tverrfjelletに行ってみる。2009年Sanfjelletに登った(山スキー;ラネージュ#322)帰りに目を付けておいた山。

幸いなことに、Tverrfjelletの登り口に着くと、雨は止み、陽がさしてきた。

即出発。

湖の向こう側に、Krokelvtindenの雄姿。標高は高くないが、すばらしい岩壁。とても800mに満たない山とは思えない(写真7)。素晴らしい景色を見ながら回り込んで、Tverrfjelletまで行こうと思ったが、雲行き怪しく時間も遅いので中途で断念する。

その代わり、復路、Senja島の絶景地帯を堪能する。トンネルを出ると素晴らしい絶景、岬を回ると見たこともないような、まるで、指輪物語に出てくるような景色、本当に妖精か、トロルか、果ては悪魔の棲み処か、次から次へと現れる超絶景。未だ夢に出てくる景色の数々であった。

 

2/24 Ballangen camp 615 - 830 the starting point of Rundkollen of Lavangen - 900 the starting point of Snofjellet of Salangen -1030 Svenelvmo ; Road to the starting point of Tredjefjellet of Torsken closed-1100 The starting point of Tverrfjellet of Berg in Senja 曇、薄日さす

The starting point of Tverrfjellet 280moh 1130 >> 1230 600moh point 〜〜 1300 The starting point

The starting point of Tverrfjellet 1320 - 1820 Ballangen Camping

 

 2月25日(月) Durmalsfjellet(Raudtinden) 869m 登頂  曇  写真9

立田、田中秀、川島

https://peakbook.org/peakbook-element/14298/Raudtinden.html

今日は私が大失敗。登山口に着いてから宿に靴を置いてきたのに気づく。結局、改めて、靴を取りに戻り、予定の2時間遅れで出発となる。

以下、快速、快足で登頂果たした立田さんの報告。

 

NARVIKに入った2月22日は稚内厳冬を想い起すような吹雪模様、さすが北欧ノルウェーと感心したのだが、以後はすっかり雨模様。23日、24日は雪を求めてスェーデン国境、Senja島など長駆のドライブとミニ山スキーを楽しんだ。

 NARVIK4日目の今日はBallangen CampからNARVIK手前のBeisfjordが登山口、前2日間と比較すると誠に至近距離である。Raudtinden、標高869m、登り始めは標高50mと山頂までそれなりの標高差、宿から近い上に登りごたえも期待できる。しかし、しかしである、そういったときこそ、好事魔多し。登山口はBeisfjord外れの住宅街、町内会の掲示板みたいのがあるところに車を止め、いざ出発というときにその“魔”は発覚した! なんと岩さんが靴を車に積み忘れていたのである。

 ありゃありゃであるが、どうしようもない、Ballangen に取って返して再び、Beisfjordから登りだしたときはちょうど正午だった。そんな長い水入り後、住宅街脇の凍った車道をとぼとぼシールで登り始める・・・。モチベーションが今ひとつ高まらないのはみな同じだと思うのだが、邪念を振り払うようにさっさと先へと行く立田、田中さん、川島さんのせっかちさん、すなおさん3人チームと他の4人チームに気が付くと別れてしまっていた。途中、先行チームはかなり待ったり、奇声を発したりしたのだが、後続チームを確認することは出来ない、それもそのはず、さっさと方針変更し別ルートの探索に向かっていたとのことである。

 さて、車道上の送電線をくぐって1km弱進んで鋭角に折り返して、さらに1km弱で再び送電線の下(標高点310m)に出る。ここからは送電線沿いの切り開きを標高差150mほど直登後、送電線下から離れ、山頂から南西に延びる尾根を辿って行く。灌木帯を抜けて振り返ると町の名のとおり、フィヨルドが眼下である。登り始めの緩い感じや送電線などの人工物から離れ、いきなりノルウェーの山々感が増す(写真9)。とそこで雪混じりの風が我らを襲い、視界もやや悪くなる。山頂までは一投足であるが、吹雪を突いてというほどの気分もなく、一同アイコンタクトで撤収となる。山頂までちょうどあと100mの標高768mが最高到達点、今にして思うとあの程度の小雪、行っておけばよかったと思うが後の祭りである。

 下りは山頂直下、南西尾根ともまずまずの滑降を楽しむが、送電線下の切り開きは硬いけど板と靴はズボズボ、バリバリと潜っていくというとんでもない悪雪だった。スキー板を回転させるなどということはすぐ諦めたが、潜り方や雪の状態、抵抗感も一様ではなく、斜滑降、キックターンだけでも苦渋の下りとなった。なんとか這々の体で、車道まで下り立てば、あとは若干の制御は必要だがほぼ自動運転、瞬く間にみなの待つ、下山口到着となった。

 

・・・以下、立田 ノルウェーの山々雑感・・・

 滞在中、住宅街からというのはこのRaudtindenだけだったが、ノルウェーは海からだろうが、道路脇からだろうが、山があって雪があればどこでも登れる。まあ正確には岩さんあってこそのおかげで登れるのですが・・・。

 山の上から眺めるフィヨルド、凍結した湖、川、どこまでも続く人工物の無い深い山波は魅力的だった。また、ガイドレスで自分達だけで登っていけるのも大変、魅力である。オスロ深夜、岩さんとビール、ワインを飲みながら伺った北のモンブラン、Jiekkevarri 1854m、「Magic Mountain Lodge」という山スキーヤーには最高の宿などにもおおいに興味をそそられ、再訪を果たしたいと思います。(以上、立田さん報告終わり)

 

2/25 Ballangen Camp 900 – 830 Beisfjord – 1050 Ballangen Camp 1100 – 1150 Beisfjord 曇 1200 >> 310m送電線1310 >> 1430 The top of Raudtinden 1445 雪〜〜1530 Beisfjord 雨 1540 – 1555 Narvik (買い物) 1640 – 1700 Ballangen Camp

 

2月25日(月) Stubblidalen 300m 曇  

岩、菅澤、加瀬、樋渡

 

出発が遅れ、山頂狙う立田さんは快速快足でどんどん行く。さて、鈍行組はどうするか。結局、今回は荒天で諦めた、Hunddalenからの下山路の下見を兼ねて、Stubblidalenに行くことにする。途中、標高240m付近で、Raudtindenに行く道と分かれ、Hunddalenの懐に入っていく。進むにつれて、このエリアの核心部の山々が見えてくる。氷河を抱く山々である。今回は荒天で氷河滑降はおあずけになったが、次回の氷河滑降のためにも、とりあえず、もう少し奥に行ってみる。

小1時間進み、右手に水源地(Stubblielva Kraftverk)の看板が出てきたところで、終わりとした。数年後、氷河大滑降のあとに、また、ここに来られれば望外の喜びか。

 

5/4 Beisfjord 1200 >>1400 Stubblielva Kraftverk 曇 〜〜1500 Beisfjord

 

この日の夜、晴となり、夜2時ころまで、オーロラを追うも結局見れなかった。逆に寝不足になり、翌朝体調不調となる。やれやれ。

 

2月26日(火) Spanstinden 1457m 登頂  曇(山頂ガス)  写真8

 登頂:立田、田中秀、川島、樋渡

https://peakbook.org/no/peakbook-element/838/no/Spanstinden.html

今日は、個人としてはイマイチであったが、パーティとしては会心の山行だった。(それとも、無謀一歩手前?)

昨夜、出てこないオーロラを深追いしすぎて寝不足、体調不調。さて、どうしたものか思案。立田さんを筆頭にメンバーは元気。今日も天候イマイチだが、北のほうは曇で、寒気も下りてこず、午前中は天気持ちそう。

さて、この北のほうで、会メンバー全員が登れる中級クラスの山は、Rundkollen、Snofjellet。いずれも過去に登ったことがある(ラネージュ#316、#334、#318)。過去に登った山にまた登るのはパーティ的にはイマイチ。この際、このあたりで、日帰りで登るには一番ハードな山を狙い、一人で良いからピークハントを狙うほうがパーティ的には面白い?かなと、自問自答。当然、この場合、予報より天気悪化が早まるとヤバいことになるが。

と、早朝、考えていたが、結局、後者にすることにして、目標はかなりハードなSpanstindenに決めてメンバーにも装備はすべて車に積むよう伝えた。

まあ、もちろん、寝不足絶不調では、私は到底登れないわけだが、もしもの場合に備えて、私は、登山口で車中待機していれば、危急時迅速対応できると考えた。

結果的には、想定通り、立田さんを筆頭に4名が、この難峰をおとすことができ、パーティとしては会心だった。(と云えるかな?)

さて、リーダーというかツアコンとしての世迷言はこれくらいにして、肝心の山行報告は、山頂到達した樋渡さんに報告を頂くことにする。以下、樋渡さんの報告。

 

今日はNarvikの町からE6(欧州基幹国道)を使って北へ約60kmほどのところにあるSpanstindenへと向かう。 2台の車はE6の退避スペースへ駐め、メンバー全員でそそくさと出発。 山頂は見えなかったが視界はまあまあである。 始めは丘状のところを進み、その先には急なミックスの斜面が立ちはだかっていてルートはどのようになるのかと考えながら進んだ。

エネルギーの余っている立田さん川島さんはグイグイと進んで行く。 岩さんは前夜のオーロラチェックによる寝不足からか段々と遅れていった。 (岩さん、今日は無理せず引き返して車中待機するかもと言っていた)

菅澤さん加瀬さん田中さん樋渡は登り易そうなルートを進んで行く。 立田さん川島さんと合流後クトーを着けてなおも進んで行くが、その後菅澤さん加瀬さんがやや離れてきた。 しばらくすると二人から声が掛かり、ここから下りるとのことであった。

4人になった後、岩壁の下をトラバース気味に登る辺りで雪交じりの強風となって来た。 窪み状のところで一旦相談。 もう少し行って見ましょう、ということになって進み出したが、岩の上にアイスバーンが載っているような状況となり、センター幅の広い板の私にとっては本日の核心部となってしまった。 左を見ると同じような斜面がずっと続いていて、落ちたら無事では済まなそうである。 久しぶりに大緊張のトラバースだった。

その後は凍ったエリアもなくなったが狭いルンゼ状のところは一部スキーを脱いで登ったり、となかなか手強いルートであった。 私は汗かきなのでヘルメット・ゴーグルを着けずにいたが、吹雪のためにメガネに雪がどんどん着いてしまい拭いても拭いても追いつかず、視界の確保には苦労をしてしまった。

立田さんを先頭に川島さん田中さん、やや遅れて樋渡となったが、ここまできたならば一人で下山と言うわけにもいかず、何が何でも登らなければ、との思いで頑張る。 途中は広そうな斜面となっていて滑降時に視界が良いことを祈りつつスキーを前へ繰り出していった。

頂上付近はやや平坦だった(写真8)。 視界が良くないのでGPSを頼りにピークを目指す。 そこには樹氷のようになっているケルン? があり、4人で登頂を喜んだ。

滑降の準備に入ったが、視界は残念ながら良くない。 時々滑っているのか止まっているのか分からなくなってしまう。 主には田中さんがルーファイを兼ねてトップを滑ったが雪面がよく見えず苦労されているようであった。 後からの3人は田中さんの動きを見ているので危険個所? を察知したが、それでも同様に思わぬ段差などには苦労させられた。 視界が効かないので頻繁に止まってGPSの登りの軌跡を参考に皆で相談しながら滑降してゆく。 途中、広いルンゼ状の気持ち良さそうな斜面が前方に見えたが、GPSで確認すると大間違いであった。 危ない危ない。 視界の効かない中、GPSは必携である。

登りのルートからは少し右側(下に向かって) を滑ったが田中さんのルーファイはさすがである。 大きな危険個所は無く、登りで大緊張した個所もしっかり避けてバッチリ雪のあるルートを行く。 標高が下がるにつれて視界もやや効くようになり、疲れた脚には応えたが4人とも存分にシュプールを刻むことができた。

遠くに、E6が左右に通っているのが見えた時には「ここまできたぞ」という感じで、2台の車が見えるようになってからは「もう少しでお仕舞いかな」と少し残念な気持ちになるが、最後の頑張りで無事帰着する。

菅澤さん加瀬さん岩さんは我々の姿が粒のように見えた時にはほっとしたそうです。 約5時間、大変お待たせをして申し訳ありませんでした。 お陰様で4人の無事登頂の報告をすることができました。(以上、樋渡さん報告終わり)

 

2/26 Ballangen Camp 550 – 715 Bukkemyrvatnet ved E6 曇 730 >> 1155 The top of Spanstinden ガス 1220 〜〜1420 Bukkmyrvatnet 1440 – 1530 Narvik (買い物) 1630 – 1650 Ballangen Camp

 

なお、岩は、標高700〜800mくらいまで行った。何度も書くが、昨夜の睡眠不足で絶不調。山頂到達を託した立田さんは本領発揮でグングン飛ばしていて、ただでさえゆっくりな私が、さらに絶不調では、どんどんおいていかれるばかり。ほとんど、単独行状態。登るに従い、だんだんガスが濃くなってくる。高度計とコンパスのみのマニュアル式位置情報システムでは、これ以上ガスが濃くなると、下山路を見失う可能性がある。危急時の留守役が先に迷っては本末転倒。とっとと下山することにした。

 

Bukkemyrvatnet ved E6 曇 730 >> 845 700-800moh ガス 〜〜 930 Bukkemyrvatnet

 

私が車に戻り、しばらくすると、菅澤さん、加瀬さんも戻ってきた。結局3人で、このあと、E6沿いの退避帯で5時間、山頂ゲット組の帰りを待つことになった。

 

2月27日(水) ロケハン 雨  

岩、加瀬、樋渡

 

今日は、終日朝から大雨。天気予報どおり。

この日は、ロフォーテン諸島観光ドライブ組とロケハン組の2隊に分かれることになった。

 

で、ロケハン組の使命は;

今日は朝から土砂降りの雨(北極圏でこの雨は、まさに異常気象、この日ロンドンは20℃越えで、2月のロンドンがまるで夏、地球温暖化もついにここまできたか、というかんじ)だが、予報では28日は快晴。

明日28日全員登頂できる、中級クラスで標高1000m以上の山を、ぜひ探さねばならない。もちろん過去に登ったことの無い山。ポイントは車降りたら即スキーが履けるような積雪があること。22日からずっと気温はプラスで、着いた日は真っ白だった景色も、アッという間に真っ黒に(このエリアは針葉樹林、針葉樹林は雪がないと黒く見える)。国道脇にはもうどこも雪無し。2月の北極圏なのに。

というわけで、『過去に登っていない山で、中級クラス、標高1000m超、道路脇から雪あり、このような山とルートを見つける』のが、ロケハン組の使命。

もちろん、目ぼしい候補は決めている。

Ballangenより南のTysfjordエリアでは、Stetind1047peak、Sorkvanntinden、Snoskavltinden−south、空港側のSkanland/Evenesエリアでは、Saetertinden、Skavikollen、Revtindが、候補。

朝食食べロフォーテンドライブ組の出発を見届けたら出発。

まず、いままでとは反対、ロフォーテン組とも反対、E6を南下する。

向かった先はStetind。2011年に加瀬さんと登って(ラネージュ#334)以来8年ぶりの再訪である(2011年は時間切れで中途断念)。この山は、素晴らしい一枚岩の岩壁、ノルウェーで一番有名な山だ。が、登山口の国道脇には、まったく雪が無い。2011年5月より少ない。とりあえず残念ながら却下である。

次は、雨降りしきる中、フェリーでTysfjordを渡る。雨に煙るフィヨルドもまた憧憬か。湖面ならぬ海面は鏡のようにおだやか。雨が海面を打つのみ。小1時間フェリーに乗ったあと、また、E6を南へ南へ。

と、しばらく行くと、雨が雪に変わり、路面があっという間に圧雪路。着いた日を除き、圧雪路を走っていなかったので少々焦る。どうも峠に向かっていて、標高が300m近くまで上がってきている。これは絶好である。地図に依ると丁度峠付近がSorkvanntindenの登り口。車が止められそうな退避場所を探す。数ポイント見つける。二つ目にして良い候補地が見つかる。まだ午前10時なので、もっと良い候補が無いか、探索継続。さらに、E6を南下し、途中で旧国道へ。峠を下ると、また、雪は雨に変わり路面に雪はまったくなくなる。運転はラクだが、山スキーには不適。でも、さすが旧道、すぐに、また峠道に。雨もふたたび雪に変わり、なかなか良い感じ。Snoskavltinden−southの登り口付近である。ここも候補だが、ルートをよく読むと、ザーザーと煙る川を渡渉する必要あり。ちょっと難儀か。渡渉点を上部にすれば行けるかも。まあ、さきほどの、Sorkvanntindenのほうが良さそうだ。

さて、Sorkvanntindenに行く可能性が高くなってきたが、もう少し探査を継続。今度は行く先を北に変える。E6を北上してBognesからフェリーでロフォーテン諸島東端Kvaefjord島のLodingenに渡り、空港側のSkanland/Evenesエリアに向かう。BognesからLodingenに渡るフェリーは大型新造船で快適。フェリーカフェで昼食にする。私は少々高価だが久しぶりにノルウェー料理を食べた。フェリーからロフォーテン諸島の絶景が拝めた。まあ、22日以降、どこ見ても絶景だらけで、それだけで飽きないところではある。

Lodingenから東に向かう。ロフォーテン諸島から空港を通りナルビクに向かうE10を走る。ロフォーテンドライブ組はこのE10を諸島の筒先まで行っているはずだ。50kmほど走ると、候補地Saetertindenの登り口だが平地はやっぱり雪が無い。登山口には駐車場もあるがまったく雪無しである。どうも峠道じゃないと雪がないようだ。あきらめて、E10を東に走りKvaefjord島からSkanland/Evenesエリア、すなわち、スカンジナビア半島に渡る大きな吊り橋を走ったあと、E10と分かれ脇道R825に入る。路肩に雪無く期待は持てないが相変わらず景色は良い。午後2時をすぎ、下校時間。可愛い小学生の一団が歩いている。安全のため車速を緩めると、彼らは車内にいるのが見慣れぬアジア人と知ると「ベー」をしてきた。小学生のやることは古今東西みな同じである。Skavikollenの登り口に行こうとするが、途中で通行止め表示。24日のSanfjelletと同じである。季節外れの大雨で、落石でも起きたのか通行止めだらけ。やれやれ。

で、最後の候補地Revtindの登り口に向かう。この山は、ラネージュ#334にも、『Revtindはナルビクの対岸にあって市内からも良く見える、まるで滑り台のような山容をした山スキーにうってつけの山。ただ、その滑り台にどのように取り付くかが難しい山で現地の山スキールートガイドでは、まだ山麓に十分雪のある3月に裏から回り込むようなルートを推奨している。その登山口、さすがに5月は大雪の今年でも雪は一切無し。というわけで、今日はRevvatnetから登れないか偵察してみることにした。』というわけで2011年下見までした山。

今日は、その『裏から回り込むようなルート』の登り口を偵察。

だが、この大雨。そこもやっぱり雪無し。

結論は、明日はSorkvanntinden、となった。

どうも、Revtindは、Hunddalenともども次回におあずけとなった。

 

 なお、これら候補地は、いずれも私のこの地域での過去の登山経験や、地図、この地域の山スキーガイドブックから選んだ山、ルートである。ガイドブックには記載がない好ルートも多数あるので、事前に丹念に地形図を読んでおくのも重要である。

 

2月27日(水) ロフォーテン諸島絶景ドライブ  雨  写真16

菅澤、田中秀、川島、立田

 

こちらは菅澤さんに報告をお願い。

以下菅澤さんの報告。

 

<ロフォーテン諸島(Lofoten)絶景ドライブ報告>

薄明、バランゲンのコテージをTOYOTA-RAV4で出発。

4日連続で行動したので今日は休養日となった。この日我々に与えられたミッションは「ロフォーテン諸島の走破」であった。はたして休養日となるのか?

6日目となり走りなれたE6を40kmでナルビク市街、有料新道の橋を渡りさらに80km走ってハシュタ・ナルビク空港の脇を通過。運転を交代しながらE10をひたすら西進する。意識していないと左折の際につい左車線に入ってしまい、対向車が現れてあわてて右車線に移る。方向指示器とワイバー、ロータリー式交差点なども慣れが必要だった。でもタイヤがスパイクを打ったスタッドレスタイヤなので安心感がある。

これから向かうロフォーテン諸島は、北極圏のうち北緯67度から68度までの間に横たわるノルウェーの北西部に位置する島々で、半島状に大西洋に突き出ている。ここを東西に貫く道路がE10で、1級国道といったところか。幹線道路のわりには曲がりくねっていて、道幅は広いところで8m、狭いところで6m。路肩に除雪された雪があるのでさらに狭く感じる。中央分離帯のない道を大型トラックが時速80kmぐらいで対向してくると怖い。速度標識は30〜90kmを表示していたが、標識のない道は80kmぐらいで走っていて、急に50kmとか40kmに制限されている場所はたいてい集落か学校が近いことを示している。凍結路を現地車はかなりのスピードで走っていて、慎重に走っているレンタカーを不慣れとみて追い越していく。ただ普通は車間距離をたっぷり取り、右左折合図も200mくらい前から出すなど運転マナーは良いと感じた。

標識で目立ったのは「エルク」らしき大型の鹿の標識で、いかにも北極圏らしい。日本では「タヌキ」といったところだろうが市街地近くでも多くみかけた。菅澤はバランゲンキャンプに到着初日の夜、馬みたいな動物(馬と思ったがエルクだった)がゆったりとキャンプ地内を歩いているのを見ているので実感があった。横断注意の道路標識では「サンタクロースが横断中」の絵柄があると聞いていたが残念なことに見かけることはなかった。

海岸線は入り組んだフィヨルドに囲まれていて、穂高の屏風岩や谷川の衝立岩が千個ほども海から数百mもそそり立つ様は迫力満点だ。コーナーを曲がるたびにあらわれる岩肌は氷河に削られた顕著なU字形が多く、自然の造形美に目を見張る。この日は雨で暗い空と海の色だったが絶景には変わりなく、見飽きることはなかった。

通過する集落には小型のヨットが浮かび、赤や青、白に彩色された民家が立ち並んで童話の世界のようだ。

昼食を予定したホテルを訪ね当ててみると「デイナーから」と断られ、次に訪ねた桟橋のレストランは休店とかで昼飯にありつけなかった。(その結果、昼食をどうしたかは記憶に残ってない。)

異様な臭いがしてくると思ったら物干し台に無数の鱈の頭だけが干してある。それを当てにしているのか鳥たちがたくさんいた。

E10は多くの橋を渡り海底トンネルも2回通過して先端近くの町レイネ(Reine)に向けて南下する。さらに走っていくとÅ(オー。オーはノルウェーのアルファベットの最後の文字で「A」の上に丸がついている。)というロフォーテン諸島西端の集落に到着した(写真16)。道路はここであっけなく終了していた。見るべきものは何もなさそうなので直ちにUターンして戻ることに。

帰路では給油所がなかなかなく、運転者はガス欠の恐怖をこらえながらアクセルを踏んだ。

暗い峠を越えたところで対岸にナルビクらしき町の灯りが見えた時は正直ほっとした。

遅くなったので夕食を済ませてから帰ろうということになり、ナルビク中心部の客のいない中華料理店に入った。皆さんが注文したのは醤油味のスープそばだった。ラーメンをイメージしたつもりが、出てきた一品はソース焼きそばで、がっかりしながら黙々と食べた。

往復740km、15時間に及ぶミッションをなんとか無事終えることができた。(以上、菅澤さん報告終わり)

 

2/27(水) 06302145、気温5℃、終日雨

 

2月28日(木) Sorkvanntinden 1105m 登頂  晴  写真3、写真5、写真6

カールから登頂組:岩、菅澤、加瀬、田中秀、樋渡

カール滑降組:岩

https://peakbook.org/peakbook-element/2752/Sørkvanntinden.html

 今日は昨日のロケハンの結果通りSorkvanntindenに行く。

 Ballangen Campingを出るときはまだ薄曇りだったが、Tysfjordを渡るフェリーに乗るころには雲一つ無い快晴に。フェリーからは昨日同様ロフォーテン諸島の絶景が拝めるがやはり雨と快晴では大違い。メンバーみんな盛んにシャッターをきっていた。

 フェリーを降りて1時間強走ると昨日の峠道に。きちんと予定していた退避場所に車を入れて出発準備。今回ノルウェーに来てはじめての快晴での準備である。気合十分である。

 スタートして5分。山の全貌が望める。私は以前からの下調べどおり、南サイド(向かって左サイド)のカールからの回り込みルートを考えていたが、立田さんは東南稜直登を主張。立田さんらしい選択と云える。

 まあ、天気も良いし、二隊に分ける。一隊はカールから回り込み登頂組、もう一隊は東南稜直登組である(写真3)。写真3の右側ピークがSorkvannttinden山頂、正面がカールルート、右稜線が東南稜ルートである。

 

 ここからは、まずカールから回り込み登頂組の報告。

 

 山の全貌が望める丘から緩く下る。Kjerringvatnet(湖)のそばまで行き、カールの末端に取りつく。カールは一面の大斜面だが予想通りかなり固い。すぐにスキーアイゼンである。斜度は20度程度の中級斜面で大したことはないがとにかく固い。ところどころ青氷さえある。スキーアイゼンでもときどきずれる。神経を使う斜面がずっと続く。途中で加瀬さんがスキーアイゼンをどこかに置いてきてしまう。すぐに数百メール下り見つけることができた。安堵である。

 山頂方向を望むと、立田さんと川島さんが手を振っているのが見える。彼らは強力。東南稜をガンガン登っているようだ。かなり速い。こちら亀組はなんとかカールを詰めて標高942mの肩に出る。斜面は固い。ここから靴アイゼンに替える。今日は装備総動員である。私だけスキーは担がず引きずる。山スキー同志会も昔は引きずり派が主流だったが、最近は、みな担ぎ派である。ゆっくりゆっくり一歩ずつ進む。久しぶりの雪の1000m峰登頂である。2017年3月の船形山以来である。ノルウェーでの雪の1000m峰は2011年のSandviksfjellet(Bihparcohkka)(ラネージュ#334)以来である。

 ようやくみんなが待つ山頂に。立田さんはもう1時間も山頂にいる、とのこと。(写真5、6)(写真5の田中さんの左に写っているのは湖ではなく海である、湖は凍っているが海は凍らない)。

 

 山頂からの滑降は、立田さんが東南稜から左に好適斜面があるとのこと。なかなかそそられるが、ヒザ、腰に不安があり無理がきかないので私だけ往路カールを滑ることにする。ここからは、私のカール滑降の報告である。

 

 山頂台地は幅50メートルと広いが両側ともその先は壁。雪面はクラストしておりひっかけてこけて落ちるとやばいので距離150メートルほど、このまま、アイゼンで戻り、標高1080mあたりから滑り出す。緩いが固いクラスト斜面を横滑りとシュテムターン、ジャンプターンを交えつつ慎重に滑る。カール上部は全面アイスバーンならまだ良いのだが、所々にモナカ雪もあり、雪質がころころ変わる。連続ターンと斜滑降を織り交ぜる。

ふと上を見上げると、他のメンバーが山頂からカールに直接下るルンゼ状の沢を滑ってくる。やや狭いが雪質は良さそうだ。本来はこちらカール側ではなくて、東面を滑るのではなかったのかな、と、思う。このあたりのいきさつは、このあとの川島さん報告に任せる。

カール中盤標高750m付近からようやく雪質も安定し、安心して連続ターンで行けるようになる。至福のときである。カールを下りきり湖のそばにきたところで小休止。他のメンバーはカール東側のひだを下りきらないように斜滑降で抜けていった。私はそれを見ながらシールを付ける。シール滑走、シール登行で、車に戻る。帰りは他のメンバーを待たすことなく最初に戻ることができ、やれやれである。リーダーというかツアコンが毎回待たせていては名折れである。なんとか帰りは真っ先で戻る。

これで、雪のノルウェー1000m峰19座制覇である(うち北極圏は11座)(いずれも山スキー)。まあ、次回、あと1座を加えて、山スキーノルウェー1000m峰20座制覇としたい(願望)。

 

2/28 Ballangen Camp 610 – 650 Skarberge 725 (フェリー) 755 Bognes – 910 The starting point is the parking via E6 in Cierreg vuopmi. 930 晴 >> ++ 1300 The top of Sorkvannttinden 1310 晴 ++〜〜>> 1430 The starting point. 曇 1450 – 1615 Bognes 快晴 1700 (フェリー) 1730 Skarberge -1755 Ballangen (買い物) 1825 – 1830 Ballangen Camp 快晴

 

2月28日(木) Sorkvanntinden 1105m 登頂  晴  写真3、写真4、写真15

東南稜から登頂組:立田、川島

山頂直下からルンゼ滑降組:菅澤、加瀬、田中秀、立田、川島、樋渡

https://peakbook.org/peakbook-element/2752/Sørkvanntinden.html

 東南稜直登登頂、山頂直下ルンゼ滑降組の報告は川島さんにお願いしたい。

以下、川島さんの報告である。

 

目の前に真っ白に輝くSorkvanntindenがそびえている。立田さんが示す斜面の直登ルートにうっかり同行することにしてしまった。この日はノルウェーに来て初の快晴。

出発した時はまだ暗く、藍色に染め抜くような山の影が迫る道を港へ向かう。フェリーを待つ間に青白い世界に暖色の光が射し、フィヨルドの個性的な岩峰が白く浮かび上がった。これが見られただけでも満足。フェリー船内では「山頂でこれを食べるのを楽しみに登ろう!」と田中さんが美味しそうな高級スモークサーモンのサンドイッチを購入。フェリーを降りた後の道のりも眩しいほどの山々が次々姿を現す。登れそう滑れそう、目指す山は何処?と窓を開閉してはシャッターを押す。巨大な烏帽子型の岩山に圧倒され、その裾のトンネルをくぐると本日の取付きに到着。

ここまでで気分は最高に盛り上がり、立田さんのあっさり「大丈夫ですよ」の言葉にも心がノッテしまった。

平原を進み小さな沢状の手前で南面カールに向かう5名と別れる。まずは高度を落とさないように右手斜面の鉄塔を目指す。その斜面の一段上に出ると、ブッシュも無く足元を縞模様の横風が吹き抜ける。クトーを装着し、東面をトラバース気味に山頂方向に向かう。一番心配なのは山頂の南側稜線に出る手前がかなり急な事。「あそこ壁ですね…」に立田さんはやはりあっさりと「大丈夫ですよ」。大きなウェーブにシュカブラが重なり美しい。高度を上げるごとに新たな山が姿を見せる。立体模型の地図のようにも見える。白く平らに凍っているのは湖。徐々に左手南側の尾根寄りに進路を取るが、右手東側大斜面は風向きも良さそうで滑るルートとしてとても美味しそう。「あそこを降りましょう」

 標高900m辺りから斜度もきつく斜面が益々固くなり、アイゼンを装着しスキーを担ぐ。そして、問題の壁へ(写真15)。立田さんがウィペットを握り蹴りこみながらステップを刻んでくれた。私は両ストックの根元を握り、しっかり先を刺しながらその刻みに足を掛ける(写真4)。無事稜線上に出ると意外にも風も無く穏やか。新たな景色が広がる。反対側南カールの下に5名の姿をみつけ「ヤッホー」と手を振る。山頂まではすぐそこ。緩やかな斜面をスキーでゆっくり進み登頂。北極圏にも関わらず暖かく暫く景色を楽しむ。これが見られて良かった〜!

それから皆次々に到着し、素晴らしいノルウェーの青空の元、全員登頂を喜び合う。田中さんは美味しそうにサーモンサンドを頬張る。

 いよいよ滑走開始。予定の東面の大斜面に向かうには山頂から見える範囲の緩やかな斜面が終わる辺り左手に覗き込まなければ降り口は分かりにくい。トップを滑る立田さんはあっという間にポイントを過ぎ降りてしまった。ノルウェーに来て吹雪にホワイトアウト、気持ちよく滑られるならこのままこの谷を、薄化粧パウダーのガリガリを皆で楽しむ。滑走終了からは登り返しを避けたい気持ちで東方向にトラバースするも最後は諦めてシールに切り替え。早くからシールで登り返す岩さんがトップでゴール。続くは根性でシールなしスキーの立田さん。流石〜!!

本日は今回のノルウェー山行の中で最も素晴らしく良い締めくくりとなりました。

そして全員で山頂に立つことが出来たのが何よりでした。(以上、川島さん報告終わり)

 

2/28 The starting point is the parking via E6 in Cierreg vuopmi. 930 晴 >> ++ 1200 The top of Sorkvannttinden 1310 晴 〜〜>> 1430 The starting point.

 

2月28日(木) オーロラ報告 快晴 写真1、写真2、写真13、写真14

 

  Sorkvanntindenの山頂を全員で踏んで、意気揚々とBallangen Campingに戻る。帰りの道中も快晴の夕日のもと絶景だらけだった(写真13、14)が、この夜、さらに素晴らしいことが我々に舞い降りる。

  夕食も終えて片付けをしていたら、暖炉の薪調達なのか、それとも、離れのシャワー棟に行っていたのか、外から田中秀さんから緊急事態発生の声。

  その声で、あわてて外に出ると、図上を光のうずが舞っているではないか。まだ夜8時、今日はもうオーロラ登場である。それも、すばらしいオーロラ(写真1、2)。2000年以来何度もオーロラを見ているが、この夜のオーロラは、2000年のオーロラ爆発のときと同じか、いや、それ以上の狂喜乱舞だ。まさに舞うというかんじ。それも激しく、さらに、激しく全天を駆け巡る。色も通常ではなかなか見ることのできない朱色まで出る。なんと素晴らしい、ことだ。このあとは第一発見者の田中秀さんに報告願おう。

  以下、田中秀さんの報告。

 

<極光観賞>

 昨年の北米遠征は寡雪に泣いたが、今回のノルウェーも前日までは毎日が雨天(ベースであるバランゲンでは)という悪夢が続いた。山行最終日の29日になって懐かしい青空を仰ぎ、暗闇迫るころ全員満足して帰還。冷え始めたコテージの主暖房は薪ストーブであるが、薪が尽きていた。ワクワクした朝の出立時に薪入れのバケツを玄関先に出し忘れたのが敗因である。薪の補充がいつの間にか役目となっていた小生は、管理人宅の物置を勝手に開け薪を運ぶ羽目に陥った。このとき空の色が少し薄緑に変わっていた気がするが、晴天の夜空(夕空)は此方に来てこの日が初めてだったので確信が持てない。

 部屋が暖まって来ると次は夕食準備と風呂である。このコテージの西洋風“バスルーム”の欠点はトイレ、洗濯、そしてシャワーの3つの目的が1つの個室で行なわれることである。100m足らず先に設けられているパブリックなシャワー棟迄の緩い坂道は雨のお陰でスケートリンクいや氷結したナメ滝のように氷に覆われ超危険である。2日前に尻餅をつき尾底骨を強打してしまったこともあり、立田氏、樋渡氏と3人で車で出掛けることとなった。

 3人が車で出掛けようとしたのが7時過ぎか。コテージ上空の空の色が明らかに違った。

薄緑色の雲のようなもの、星が出ている夜空とは濃淡の差がハッキリとある。これがオーロラか!急ぎコテージ内のメンバーにも伝えると皆夕食の準備もそこそこに飛び出してくる。シャワーを浴びに行くので薄着であることも忘れ暫し見上げ続ける。

 オーロラは次第に勢いを増し、白や赤っぽい光りも放ち、空をのたうち回る生き物のように動く。絵葉書や写真集にあるような丈のあるカーテンには及ばなかったかも知れないが水面に映るほどの明るさは期待以上、ショ−タイムは優に3時間は超えていたと記憶する。この美しさは筆舌し難く描写は皆さんの撮った写真にお任せする。第一発見者ということでオーロラについて書くことになったが、この自然現象についても今更説明するまでも無いと思われるので省略させて戴く。(以上、田中秀さん報告終わり)

 

3月1日(金) ナルビク観光 ナルビク-オスロ 

 

今日は久しぶりの雪、それも結構な大雪である。オセロで白が黒に大勝するがごとく、みるみると純白の冬景色となる。オスロ行きのフライトは今日午後6時なので今日はまだ山にも行けるし、ナルビクスキー場でゲレンデスキーもできるが、メンバーみなさん、昨日で大満足だったのか、それとも、空港で帰り支度は面倒なのか、だれもスキーをするとは云わない。

 

朝からみんなで、コテージの掃除を行い、大家さんに、日本人はきれいに後片付けするので、大好評という評判をなんとか残して??Ballangen Campingをあとにする。Revtind、Hunddalen等宿題を未だ残しており再訪も十分ありなので、良い評判は大事である。

 

10時にナルビク市内に入り、戦争博物館や土産物買い物なので時間をつぶして、午後2時すぎ空港に向かう。あまりの大雪で、一部のメンバーに夕方のオスロ行きフライト、大丈夫かなという声もあったが、過去の経験では、風が弱ければ問題無し。とくに、ここの空港(Evenes空港)は旭川空港同様便数少なく除雪時間たっぷりで欠航は無い。とはいえ、1時間程度の遅延はよくありで、今日も結局オスロに着いたのは、1時間強遅延の午後9時前だった。

なお、このようにノルウェー冬の国内線はときどき遅延するので、冬のノルウェーの場合、国内線から国際線への同日乗り換えはギャンブルである。

 

3/1 Ballangen Camp 930 – 1010 Narvik (観光と買い物) 1400 – 1510 Evenes空港

EVE 1900 雪 **SK4095**2030 OSL (夕食または買い出し) オスロ空港 2140 曇 = 2155 Thon Hotel Gardermoen

 

3月2日(土) オスロ-東京

 

メンバー全員無事帰国。

岩は朝10時40分のフライトのため3時間前(オスロ空港の早朝はかなり混むため、スキーのような特別荷物がある場合は3時間前が安心)に空港に着くように宿を出た。と、空港に着くとなにやら怪しい様子。サイレンが鳴り、人が次から次へと建物から外に退避させられている。火災報知器が鳴ったとのこと。10分ほどして、消防車も到着。本当に火事なら今日の帰国はアウトか、と、不安になってきたら、8時すぎ放送が入り全解除。外に追い出されていた人たちは我先にチェックインしようと建物へ。

これで帰国できると安堵である。

ただし、私の乗るフライトは、この火災報知器トラブルの影響かどうかは不明だが、結局、1時間遅れでの離陸となった。幸い、ワルシャワでの乗り継ぎに余裕があり、ワルシャワ-東京便には無事搭乗できた。

オスロ空港リニューアル後、国際線免税売り場が大きく拡充され、かつ、かなり安くなっていた。ドイツやフランスなどと違い、また、昔のノルウェーと違い、今のノルウェーは市中で買うより空港の国際線免税店で買うほうが安いようだ

 

以下は岩の帰国便記録;

3/2 Thon Hotel Gardermoen 晴 707 = 720 オスロ空港

OSL 1140 晴 **LO482**1335 WAW 1440 晴 **LO19** 3/3 900 NRT 雨

3/3 成田空港940 = 1240 新百合丘 雨 1245 – 1300 自宅 雨

 

  以下は他の6名の帰国便記録;

3/2 OSL 1330**TG955**3/3 620 BKK 800**TG676**1550 NRT

 

費用; 表1は今回の一人当たりの費用総額である。

 

今回は車関係費用、コテージ代で人数が7名とまとまっている効果がだいぶ出ている。次回も費用的には大人7名程度以上が望ましいだろう。

 

最後に、2011年以来、8年ぶり2度目のナルビク、そして、2度続けて、私にご同道頂いた加瀬さんからひと言頂いて、この報告の終わりとしたい。

 以下加瀬さんから。

 

まず初めに、今回の企画立案手配をして下さった岩毅氏に感謝を申し上げます。ツアー会社ではなく、山スキー同志会の独自企画でのノルウェー遠征であった事が意味を持つ山行だったと思います。菅澤氏が言われたように「緻密な事前計画をベースとした臨機応変のデイリー計画など、現地の気候を熟知された岩Lの都度のご判断のおかげ・・」と思います。岩氏が居られなかったら出来ませんでした。

さて、私はノルウェーが今回で2度目の訪問である。前回は忘れもしない東日本大震災の後で、放射能汚染を危惧した欧州の各航空会社が成田への運行を取りやめるとの噂が立っていた時である。そんなわけで今回のように山スキー同志会のメンバーが多く参加する旅とはならなかった。そんな中、私は心細くも一人で成田からノルウェー行の飛行機に搭乗したのである。それに比べ、今回は仲間も多く成田空港から楽しく、昂揚感に満ちた旅が最初から始まっていた。

ナルビク近郊のバランゲンのコテージはすばらしく、前回は上等なバンガロー(失礼!)であったが、今回は広いリビングにソファー・ダイニングテーブル付きキッチン、おまけに乾燥洗濯機付という至れり尽くせりのコテージでした。おそらく、これまで岩氏が幾度となく訪れた際に培われたであろう信頼の積み重ねが、コテージ持ち主による最高ランクの提供に繋がったと思います(寝室はイマイチ!)。また前回の経験から食糧は物価が高いだけでなく種類も限られ、日本食は調達できないことから米・味噌などを持参した。それによって天候に恵まれない中でも食事でストレス発散が出来たと思います。

オーロラは最終日を締めくくる圧巻のショーでありました。岩さん曰くこれまで見た中で一番すごいオーロラだという事でした。私は神秘的というよりも恐怖に近い感覚に襲われて、ムンクの絵画の背景が分かった気がしました。このメンバー誰もが感動した天体ショーをお土産に、再訪を誓いながら帰国が出来たと思います。

おわりに、今回のメンバーの皆様がいろいろな場面で互いを気遣う大人の対応をされていて、当たり前と思いながらも、楽しいノルウェー山行を全員の協力で作って頂きました。ここに改めて感謝申し上げます。(以上、加瀬さん報告終わり)

以下、山スキー同志会メンバーによる「ノルウェー北極圏山スキー」記録一覧と、写真である。

以上である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 


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