Last Update : 2019/06/15 戻る

長次郎谷から剱岳登頂、滑降


2019GW(4/27〜5/1)
メンバー:立田L、たまちゃん、上原、Sくん

4月26日
 東京を21時過ぎ発、当夜泊の甲斐大泉・千露里庵には23時半頃到着。
 納会山行組も合流、4/27雨天予報もあり、ついそこそこ飲み語り合ってから就寝。

27日
 扇沢へのドライブ、アルペンルート乗り継ぎで室堂へと向かうがやはり、雨模様、山の上は 雪から吹雪へと変化していく。
 視界も悪く、吹雪の中、テント装備の重荷を背負っての剱御前への登りの戦意は早々に喪失、あとは頑張ってテント泊か、たまちゃん絶賛の雷鳥荘泊かに論点が移るが、入山早々、悪天下の狭いテント泊にも嫌気がさし、昼一から雷鳥荘にご厄介となる。
 これは大正解だった、スキーヤーズベッドの部屋は我々のみ、温泉に入り、自炊室利用も我々のみ、ゆっくり休養と宴会で午後をまったり過ごし、まさしく鋭気を養った。
 この悪天下、雷鳥沢、北ノ俣岳、槍沢、唐松尾根で4名死亡の遭難があったが、いずれも単独行での疲労凍死だった。

28日
 快晴、最高の天気となる。3時間ほどで剱御前小屋へと達するといよいよ待望の劔沢滑降。剱御前はいつも風が強いところだが、今日はそよ風といっていいだろう。劔沢はさほど斜度もなく、滑降の醍醐味という意味では大したことないのだが、剱岳を眼前にそのスケール感には圧倒、感動である。劔岳を真正面から見るといかに大脱走ルンゼが凄いルートなのかまざまざ実感!?。
 途中、平蔵谷、長次郎谷などチェックしながらひたすら下る。真砂沢ロッジは完全に雪の下、台地状ここらあたり以外は確認出来ない。キャンプサイトは水が取れるところと決めていたのでさらに下る。三ノ沢1680mで谷が割れており、ちょうどよい台地となっており、ここをキャンプサイトとする。テントを設営し終わると、すっかり日も上がりきり、灼熱、雪も腐り気味であり、なんだかどこか登って滑っての気分もなくなり、昼から宴会突入。3日間の夕餉は上原さんが肉各1Kのモツ鍋、豚チリ鍋調達、私がかつ丼、ワイン3Lを準備など豪華絢爛そのもの、存分に楽しんだ。

29日
 長次郎谷から剱岳山頂まで標高差1300m、まさにタフな登りだった。八ツ峰をバックに登る長次郎谷は圧巻のスケール。BCから5時間半で長次郎のコル。ここから立田、S君は山頂からの大脱走ルンゼ滑降の可能性も含んでスキーを担ぐ。たまちゃん、上原さんは劔山頂ピストン後、長次郎谷滑降の予定で皆ピッケル、山アイゼンに切り替え進む。しかしコルから剱山頂へはノーザイルでギリギリと辛く、あまり雪山経験のない二人だけで下ろすわけにはいかないと判断し、登りながら大脱走ルンゼ断念を決める。
剱岳長次郎谷
長次郎谷での3人

剱岳長次郎谷
長次郎谷登り

 長次郎谷も山頂も誰にも会うことも見ることもなく、GWだというのに静かで大いなる劔岳を満喫した。しかし、山頂からの下りは正直、ビビった。難所は岩登り経験も豊富なS君のザイル確保で3人が下りた後、S君は懸垂下降などでコルからのピストンに4時間を費やした。長次郎のコル迄は上級山スキーの範疇だが、そこから先はさすが、雪の剱と思い知る。
剱岳八ツ峰
剱岳八ツ峰

剱岳山頂
剱岳山頂

 たまちゃん、上原さんには先に滑降するよう指示し、後続2名がようやくコルから滑降を開始する頃には長次郎谷は絶景の晴天からガスに覆われ、シビアな滑降を強いられる。
 上部の急斜面を脱し、ようやく視界も晴れ、重雪ながらなんとか連続ターンと調子に乗ってくる。最初はジャンプターンだったが、ズボズボと2-30cmは潜る雪に一々、ジャンプは辛い、大ぶりな抜重、荷重動作でのターンに切り替える。
 そこは喉のように幅が狭まり、傾斜も増し、あとで考えれば吹き溜まりのようになっているところだったが、無警戒なまま左回転ターンで荷重をかけて足元の雪が崩れ落ちたのだろう、落ちていくような格好で深雪に突っ込んでしまった。斜面を滑り横切るような角度ではなく、かなり深い角度でスキーを突き刺すようなかたちである。谷側となった右足は特に深く突っ込み、右膝に激痛が走り、両足のスキーは深く雪面に突き刺さったまま、上半身は谷側に投げ出され、半ば宙吊り状態で止まった。
 猛烈な激痛と宙吊り状態にもがき苦しみ、足元を確認するとヒールは外れているがつま先は外れていない。セーフティを元々かなり強目の強度で設定しているが低速でまっすぐ突っ込むとなかなか外れない、それに該当したのだろう。左スキーはほどなく外せたが、右スキーがあまりに深く突き刺さり、どうにもならない。なんとか半身を起こして眼下に見えるS君を大声で呼ぶが、登ってくるには離れすぎていた。なんとか右スキーを外すまで30分はかかっただろうか。
 苦行は続く、右膝はちょっとでも力がかかると激痛、どっちに滑ろうが左足一本荷重、斜滑降、キックターンでS君のところまで下りていく。ここでS君から仏のお告げを頂き、ザックを背負ってもらい、空身で滑れ随分と楽になった。たまちゃん達には長次郎谷出合まで下っていいよと言っていたのだが、あまりに遅いため、シールを付けて登ってきてくれた。合流する頃には斜度も緩くなり、騙し騙し右回転ターンも出来るようになった。なんといっても空身なので助かった。
 BCに帰り着いて夕方から宴会、天気は下り坂で夜半から雨になった。

30日
 かなり激しい雨が降り続く。あとになれば天気回復見込みもあったのでゆっくり出発する頃には雨もほぼ止んだ。メンバーには負担かけて申し訳ないが、共同装備・食料は持ってもらい、個人装備だけでそれでも遅いだろうからと先に出発する。剱御前まで標高差1100m近く長い登りだったが、一回のキックターンもない斜度、雪も後ずさりに滑ることも一度もなく、痛めた膝には優しい雪と荷物を軽くしてもらったおかげで、剱御前までトップで進むことが出来た。しかし雷鳥沢の下りは辛かった。そうこうする内にアルペンルート最終便にも間に合わなくなり、雷鳥荘に再び、しかも今度は夕食付きで泊まった。雷鳥荘は食事、温泉、全館シャワートイレ、どれも最高、雰囲気も暖かくとても感激の山宿だった。

5月1日
 早々に出発、アルペンルート始発で下山。途中、菅澤さん、ふくちゃんと行き合い、エール交換。ふくちゃんと後半予定の白馬鑓温泉に行けなくなったのは残念だが、こうして別メンバーとの山スキーにたちどころにチェンジ戴けるところがYSDの有難さでもあり、みなさんに感謝!
 白馬の休日外来では右膝内側側副靭帯損傷との診断。この時期に剱岳ですか!?と先生とはしばし山談義。 
 あれから1ヶ月、まだ膝の痛みは残り、これからボチボチ夏山に復帰し、下界トレーニングにも励み、来シーズン復帰に思いを馳せております。剱岳山頂から覗いた大脱走ルンゼには一本シュプールがあり、剱岳山頂からのその美しいラインには感動、再チャレンジの機会あるや否やとちょっぴり思う次第です。しかし難関核心部は見えないその先、もし行くとしても次回は平蔵谷から詰めてみたいと懲りずに山スキー妄想に浸っております。

コースタイム
4/26  中野坂上 21:00発 - 甲斐大泉千露里庵泊
4/27  甲斐大泉 - 扇沢 - 室堂 11:45発〜雷鳥荘(泊)13:00
4/28  5:22発 剱御前小屋(2750m)8:12-29 長次郎谷出合10:19 三ノ沢BC10:43(1680m)
4/29  BC4:56発 長次郎谷出合6:02 長次郎谷のコル(2890m)10:35-11:10     剱岳(2997m)12:12-38 長次郎谷のコル14:28-38 三ノ沢BC16:35
4/30 BC8:45発 剱御前小屋14:45-15:05 雷鳥荘(泊)16:37

剱岳ルート
剱岳ルート

 
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