Last Update : Jan 27, 1998

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ラ・ネージュ山スキー記録集III 


  発行日 1989年12月25日

モンブラン                  

                        1988年4月30日〜5月9日 
                            メンバー:西川克之 記 

4月30日
 シャモニまでの往復の交通はオート・ルート・ツアーに便乗し、私はシャモニに留まり現地ガイドを頼んでスキーでモンブランに登る計画だった。成田を出発しソウルで大韓航空南回り便に乗った。

5月1日 晴 
 チューリッヒからタクシーをとばし3時間でシャモニに着いた。夕方ホテルで草嶋氏、種村氏が通訳でガイドのパトリス=ボーダン氏と打ちあわせし、まずあすヴァレブランシュに行くことにした。

5月2日 曇 
 天気が悪くヴァレブランシュは中止となった。

5月3日 曇のち晴 
 西から雲が続々と押しよせてくるのでミディのロープウェイ駅で1時間余り待って9時半に乗った。ヴァレブランシュの滑降はガスで視界がわるかった。ルカン小屋で大休止し、最後の林道はスキーをかついでシャモニに戻った。

5月4日 晴のち曇
 今日はグランミュレ小屋に入る。8時25分にロープウェイ駅で待ち合わせ。やはり10分遅れてやってきた。しかしこれがフランスタイムだと理解しなければいけない。中間駅プラン・ド・レギュでおり、シールを着けて出発する。
 ミディ直下の急斜面をトラバースする。ここはいつ雪崩ても不思議ではない危険な場所である。ボソン氷河に入るとなぜかこの2600m付近のみ穏やかな様相である。この上も下もセラック帯なのだが。横断後、小屋へ向かっての登りでは雪がシールに団子になってかなり消耗した。さらに岩の上に建っているグラン・ミュレ小屋へ入るためにスキーをかかえてザイルをつたってクーロワールを登るのは一仕事だった。9時就寝。

5月5日 曇
 1時、小屋番が起こしに来た。ボーダン氏が天気はどうだときくといい天気だと答えたので、起きだして外を見に行ったようだが、戻ってきてまたねたので私もそのままねていた。3時半に起こされた。やはりこれは遅すぎる。ガイドもねすごしたのではあるまいか。頂上までは標高差1800m近いのだから。小屋を出てクーロワールを下りるのは厄介だった。
 4時半出発。下にシャモニの街の灯が輝き、上は星空でこれなら登れそうだと思った。ボソン氷河はかなり急だが、雪は柔らかくトレースもついていてシールで楽に登れる。
 プチ・プラトー下にデブリがありスキーの先端が突き出てビンディングがころがっている。これは何か。きのう雪崩て1人死んだという。プチ・プラトーへの登りが急で上にクレバスがありルートのとり方が難しい。ボーダン氏はシールがはがれかけていたのだが、急登の終わり近くでついにつぼ足になった。しかし膝までもぐるので、自然と私が先行してしまう。後続のドイツ人6人パーティーは当然私のトレースに従って登ってくるので、自分がガイドになったような気がした。プチ・プラトー中央部は右側の山稜からセラックが崩壊してきて青氷が散乱している。そのアイスフォール帯の先まで行って待っていろというので先行する。やがてボーダン氏はスキーをかついでやってきた。シールに接着剤をぬるがうまくいかないので、私のストックに巻いていてガムテープで処理して事なきをえた。しかしこんなことで時間をついやしてしかも登りのペースも全然速くないので、この人といっしょではかえって頂上まで行けないのではないかと思ってしまった。
 雲行きもあやしい。グラン・プラトーの登りにかかるころから南風が稜線を越えて吹きおろしてきた。モンブラン頂上はガスにつつまれている。 先行の2人パーティーも稜線で引き返してすべりおりてきた。ボーダン氏も風が強く頂上は無理だという。 ドームのコルに出るとクラストしているのでスキーをデポし、キックステップでバロ小屋まで登った。ここで終わりである。窓から見ると別の2人が頂上へと向かっているので私がそういうとボーダン氏は、’They want di−e!’と答えた。実際ガスは晴れたが、稜線は凍って厳しそうだ。明日の天気はどうだろうかときくとそれはわからないという。
 ドームのコルから滑降開始。グラン・プラトーへ滑りこむ。大斜面だが雪は湿って重い。しかし眺めは雄大である。ボソン氷河は標高差・傾斜・広さ・眺望の四拍子そろった大斜面である。50分で小屋に着いた。ボーダン氏に勘定をすませてきてもらい、私はのんびり景色を見る。白い雪と青い空、そびえる岩峰、下(といってもグラン・ミュレ小屋で3051mだが)はのどかだ。
 ボソン氷河を滑りおりトラバース地点でシールを着ける。小屋の下で登ってくる3人パーティーとすれちがったのに一ヶ所もうトレースがデブリで埋まっている。確かに危険な所だ。ミディ直下の小台地でゆっくり休み、シールをはずしてプラン・ド・レギュまで滑りおりた。

5月6日 快晴
 終日グラモンテでスキーを楽しんだ。しかし今日こそ無風快晴、絶好の登山日和だった。私はただ1日のチャンスを逃してしまったのだろうか。
 なおガイド料金は2900フランのところ頂上まで行かなかったので2600フランにしてくれた。 

【コースタイム】
5月3日 ミディ 10:15 −> ルカン小屋 11:20/12:05 −>
     左岸の小屋 12:40/12:50 −> シャモニ 14:10  

5月4日 プラン・ド・レギュ 9:25 −> グラン・ミュレ小屋 13:10

5月5日 グラン・ミュレ小屋 4:30 −> プチ・プラトー 7:00 −>
     バロ小屋 10:15/10:45 −> ドームのコル 10:50/10:55 
     −> グラン・ミュレ小屋 11:45/12:25 プラン・ド・レギュ 14:10


【モンブラン概念図】
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