Last Update : Oct 18, 1998 概念図追加
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ラ・ネージュ山スキー記録集III 


  発行日 1989年12月25日

仙丈岳                     

南アルプス  北沢峠より大仙丈沢滑降                   

                  1988年12月29日〜1989年1月1日 
                M:L鈴木鉄也、柴崎松夫、手塚紀恵子、佐藤晶彦 

 正月山行はどこへ行くかいつも苦労する。まとまった休暇が取れるのに、山スキーエリアは少なく、天気も悪いことが多い。最近は山スキーにはこだわらなくなってしまった。しかし毎年へリスキーにカナダへ行く金もない。 
大混雑のゲレンデへ行く気はサラサラない。いろいろ考えた挙げ句、と言うよりも考えるのが面倒なので、今年も、比較的好天に恵まれる南アルプスに入ることにした。 83年秋にYSD入会以来6回目の冬を迎えるが、乗鞍(83)、塩見(84)、乳頭(85)、聖(86)、カナダ(87)、そして今回の仙丈(88)と半分は南アへ入っている。
 山スキーにはこだわらないつもりだったが、4人のメンバーで話しているうちに、仙丈岳でのスキー格好を試みることになった。南アルプスにスキーを持ち込むのは84年の塩見以来である。結果として、予想以上にスキーを楽しむことが出来たが、板を担いでの入下山はなかなかシンドイものがあった。
 計画に当たってはRSSAベルクシーロイファー(No.13)の原伸也さんの記録を参考にさせて頂いた。


12月29日(木) 晴れ 
 新宿23:20発急行アルプスを使用、戸台からのバスに接続する列車はこれしかない。比較的空いていて余裕で座ることが出来た。急行でも4人なので「あずさ回数券」を使うと割安だ。
 戸台にはまだ暗いうちに到着、板をザックに付け、覚悟を決めて出発する。戸台川に下りたところで、長野県警より登山計画書のチェックを受ける。寒い中早朝よりご苦労なことである。登山重視の手塚さんのみ革の登山靴、他の3人はプラの兼用靴で、前方に雪の少ない甲斐駒を見ながら河原を歩いていく。他のパーティを追い抜くことは全くなく、どのパーティもスキーを持っている我々を見て、怪訝そうな顔をして追い抜いていく。八丁坂の急坂にかかってようやく道に雪が出てきたが、スキーで登れるほどではない。南は例年よりも雪が少ないようだ。プラ靴では非常に歩きにくく、スキーは重い、バランスは悪いの三重苦である。
 雪の付いた林道に出て、たまらずにスキーを履いてしまったが、大回りの道で時間ロスだったようだ。大平小屋からは登山道を登り、北沢峠長衛荘のそばにベースキャンプを設営した。(1泊350円/人)
                             
戸台 6:45 −> 白岩 7:45/8:00 −> 熊の穴沢出合 10:00/20 −>
 北沢峠 14:15


12月30日(金) 晴れ
 北沢峠の標高は2040m、仙丈岳頂上(3033m)まで標高差1000mスキーを上げなければならない。雪道は夏より歩き易い。荷物は軽くして、スキーを引きずっていくが、今日も他のパーティに抜かれるばかりだ。森林限界を過ぎ、小仙丈岳近くになると風が冷たい。気温は低いようだが、天気は快晴、展望は非常によく、南アの山々はもちろん、北アもはっきりと望むことが出来た。小仙丈岳を越えると所々雪が飛ばされて、夏道が出ているがかまわずスキーを引きずっていく。小仙丈カールが奇麗である。
上部は急だが、スキー滑降したら気持ちよさそうだ。滑降予定の大仙丈沢は、頂上に行かなければ見る事は出来ない。一応アイゼンを持参したが、使うことなく頂上に達した。風は弱く、360度の展望を楽しみながら、スキー滑降に備えて休む。
 いよいよ、大仙丈沢滑降だ。頂上でスキーを履いて、すぐに大仙丈カールに入ることが出来た。上から見ると、地図で想像していたよりも狭く感じる。雪質はウインドクラストだが何とかターンできる。沢筋もよさそうだが、原さんの記録に従って左側へルートを取る。先が見えないほど急なので少しわかりにくいが、広い斜面が続いている。ブッシュが少し出ているが、よい斜面だ。しかし、降雪後、降雪中は雪崩れが恐そうだ。エッジングして崩れた雪がカラカラと斜面を落ちていくのはあまり気持ちの良いものではない。鈴木さんが快調に先行していく。私はエッジングすると割れてしまうクラストに足を取られて、うまくターンできない。ジャンプターンが出来れば有効だと思う。正面に雄大な北岳を望みながら、広いカールを4人だけで占領して滑るスキーは、何と贅沢なことか!!
 広い斜面から次第に沢の中へ入っていくと、風当たりは少ないが、思ったより雪質は良くない。2050mまでスキー滑降できたが、そこから先は樹木が多く、岩や流れが出ている。スキーを背負って歩くことになる。所々流れを渡りながらの沢下りも、ほとんど鈴木さんにラッセルしてもらった。プラ靴では、変に足を取られて歩きにくい。堰堤が見えると林道も近く、スキーを脱いで約1時間で林道に達した。
 林道に雪が付いていることを期待したが、ほとんどない。そのままスキーを担いで林道歩きである。北沢橋近くなって少し滑ることが出来たが、北沢橋から先は登りである。スノーモービルの後をシールで登って、日没寸前にBCへ帰り着き、長い一日を終えた。なお、長衛荘では、50円で欲しいだけ水をくれた。テルモスを持っていくと、やかんの熱湯がもらえるので便利である。

【コースタイム】 
北沢峠 6:50 −> 4合目(2430m) 8:05/25 −> 仙丈岳   
11:00/40 −> 大仙丈沢(2050) 13:00/15 −> 林道   
14:00/25 −> 北沢橋 15:20 −> 北沢峠 16:50      


12月31日(土) 晴れ
 今日は甲斐駒へ登る予定であったが、プラ靴での歩きに懲りてしまった男性3人はスキー沢(小仙丈尾根南の小沢)滑降に変更、登山重視の手塚さんのみ甲斐駒に向かった。小仙丈までは昨日と同じ道を同じように登っていく。但し、アイゼンは置いてきた。昨日とまったく同じペースで4合目に到着、小休止の後、小仙丈に登る。今日の登りはここまで、帰りの林道歩きも少ないから気が楽だ。小仙丈から見る小仙丈カールと仙丈岳はいつ見ても奇麗だ。頂上(2855m)でスキーを履く。
 スキー沢前半は、急だがスキーには充分な広さの斜面である。雪質は昨日と変わらずクラスト気味である。ジャンプターンを試みるが、2、3回でスキーがバラバラになってしまう。2550mまで滑り、ガスこんろを出してゆっくりお茶を沸かす。
 2550mからは樹林が濃くなる。枝を除けながら、斜滑降・キックターンで何とか通過していくことも多くなる。柴崎さんは180cmの板で頑張っている。少し開けた場所では、わずかばかりの新雪滑降を楽しみ、出来るだけ樹林の少ない方へとルートを取っていくと、ドンピシャリと1980mの橋のところへ出た。再び、こんろを出してティータイム、昨日より気温が高く、春山のようだ。
 今日は25分の林道歩きでBCへ帰ることが出来た。今日辺りから入山する人が多く、北沢峠にはテントが多くなった。長衛荘へ入って、ビールで仙丈岳滑降成功を祝い、少し早い年越しそばを食べる。北沢長衛小屋からは、毎晩しっかりとテント代集金にやってきた。スキーを持っているパーティは我々だけなので、覚えられてしまっているが、今日は一人当たり50円まけてくれた。

【コースタイム】 
北沢峠 7:15 −> 4合目 8:30/40 −> 小仙丈岳 10:00/30 −> 
スキー沢(2550m) 10:45/11:35 −> 林道(1980m橋) 12:35/13:15 −> 北沢峠 13:40


1月1日(日) 雪 
 夜半から風が強くなり、山の上はゴーゴーと音を立てて荒れ模様だ。北沢峠は風はないが、テントの中に入ると、サラサラと雪の降る音がする。昨夜は下山ルートを巡って議論が続いたが、荒天なのできた道を戻ることにした。
 峠の頂上でスキーを着け、今年の初滑りは林道滑りとなった。新雪が積もって気持ちよく滑ることが出来た。登山道に入ってすぐに雪が少なくなり、スキーは担ぐことになる。プラ靴で登るのはまだ良いが、下るのは厄介だ。スキーを背負って下山するのもばかばかしいが、仕方がない。ストックでバランスを取りながら、八丁坂の急坂を下っていった。小雪が降る中を、再びうんざりするような河原歩きをして、無事戸台に着いた。
帰りは伊那市から列車に乗り、あずさ回数券で岡谷から特急に乗って帰京した。メンバーの皆さん、長時間のスキー歩きご苦労さんでした。

【コースタイム】 
北沢峠 7:45 −> 丹渓山荘 9:25 −> 白岩11:20 −> 戸台 12:15

                               (佐藤晶彦 記) 


【概念図】 
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