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ラ・ネージュ山スキー記録集III 


  発行日 1989年12月25日

槍ケ岳周辺                    

北ア南部  槍ケ岳周辺滑降                         

                           1984年5月3日〜6日 
                        メンバー:L石垣隆宜、佐藤晶彦 

 今回滑降したルートは、すべてガイドに紹介されているものだったが、シュプールが見られたのは、槍沢と飛騨沢だけで、千丈沢、横尾右俣には見られず、誰にも会うことなく広大な斜面を占領して、スケールの大きな山スキーを楽しむことができた。


5月3日 曇りのち晴れ 
 前夜、室堂へ入る猿田さんパーティーのワゴン車に便乗して松本まで入る。駅で仮眠後タクシーで上高地へ。昨日雪が降ったらしく、回りの景色は新雪の山のようだ。朝食後、ザックにスキーを付けて出発、長いアプローチが始まった。さすがに人が多く、回りのペースに引きずられて、横尾までハイペースで歩く。雪解けで道はあまり良くない。
 ほとんどの人が涸沢方面へ入るので、横尾を過ぎるとぐっと静かになる。 横尾から30分位の所からスキーをつける。やっとスキーの重さから解放され、1日目は赤沢岩小屋そばにツエルトを張る。 

【コースタイム】
上高地 7:15 −> 横尾 10:40/11:10 −> 赤沢岩小屋 15:30


5月4日 快晴
 今日は槍登頂の日だが、風邪ぎみで体調が悪い。早朝の雪面は堅くスキーアイゼンがよく効く。大曲を過ぎると槍沢の大斜面が望まれ、大喰岳からの斜面は出だしが急だが快適そうだ。急登にかかるころから調子が悪くなる。無風快晴の槍沢は雪の砂漠と化し、坊主岩付近ですっかりバテてしまう。休んでいる間、石垣さんに滑ってきてもらう。そこからは、休むたびに雪でかき氷を作ってもらい、やっとの思いで肩に着く。私にとって初めての槍ケ岳山頂は、期待にそぐわぬ大展望、黒部五郎、薬師、立山など滑ってみたい斜面ばかりだ。天上沢へはどこから降りたらよいのか全く見当がつかない。明日滑降予定の千丈沢を入念に観察して肩へ戻る。
 飛騨沢へは飛騨乗越の方へ少し進んでから滑降する。重荷かつ疲れた体では、滑りを楽しむわけにはいかず、ただ下るだけだ。標高2550m付近にツエルトを張る。

【コースタイム】  
赤沢岩小屋 6:35 −> 肩の小屋 13:25 −> 槍ケ岳 14:10/30
−> 飛騨沢 15:50                            


5月5日 快晴
 2650mまで登り荷物をデポ、まずは1本空身で朝の堅い斜面を快適に滑る。2本目は中崎尾根まで登って滑る。
 いよいよ千丈沢滑降、西鎌尾根を目指す。尾根直下の急斜面はツボ足で登り、2800m付近に出た後、千丈沢乗越まではスキーを手に持って歩く。岩が出ているため、千丈沢乗越から直接沢へは入れず、少し双六よりからリフト1本分位滑降する。雪はすでに腐っており、そんなに難しい滑りではない。登り返してもう1本滑って休憩、右に槍の穂先、正面に立山、後立の山々を眺めながらのコーヒーの味は最高!!
 再び千丈沢乗越まで登り返し、西鎌尾根を2900mまで登る。尾根上から千丈沢に刻んだ4本のシュプールが眺められ、この角度からだと私のシュプールもなかなか格好よく、勝手に自己満足。今度は飛騨沢滑降。広い斜面はどこを滑ろうか選択に迷う。雪は少し引っかかるようになるが、どうにかターンしてデポ地まで滑る。 
 少し遊びすぎたせいか、飛騨乗越への登りで昨日以上にバテてしまい、乗越に着く頃にはフラフラだった。それでも気を引き締めてスキーをはく。槍沢の下りは、最初は所々岩の出た狭い急斜面、横滑りで行くしかない。広くなってからもクラストした斜面は、エッジングすると割れてしまういやな雪で、表面をなでるように斜滑降、キックターンの繰り返しで一度もターンできずに殺生ヒュッテに降りる。疲れ果ててツエルトを張るにも一苦労、ほとんど石垣さんにやってもらう。

【コースタイム】
飛騨沢滑降 7:50/9:50 −> 西鎌尾根(2800m)10:55 −>  
千丈沢滑降 11:45/13:00 −> 西鎌尾根(2900m)13:45 −>
飛騨乗越 16:05/20 −> 殺生ヒュッテ 16:40


5月6日 快晴
 薬師岳、黒部五郎岳、三俣蓮華岳と滑ってきた今年の僕らのゴールデンウイークも今 今日は最初から下りだ。槍沢は足跡とシュプールだらけなので、きれいな斜面を選んで滑る。2日目に苦労した斜面も滑り降りればアッという間だ。途中から天狗原入口を目指して急斜面を大斜滑降。晴れているからよいものの、ガスっていたらどこが天狗原への取り付きかわからないだろう。ダケカンバが数本はえている急斜面で慎重にシールを付ける。天狗池を過ぎると緩やかになり、この周辺で滑って遊ぶのも楽しそうだ。シュプールが1本だけあった。
 コルまではわずかな登りだったが、疲労のたまった身体には少しこたえた。しかし、もう登りがなく滑るだけだと思うとたちまち元気になってしまう。3日間眺めてきた槍ともお別れだ。横尾右俣はきれいな斜面で、誰にも荒らされていない。上部は急だが、雪質はちょうど良く、快適に滑る。空身だったらもっと積極的に飛ばしていきたいところだ。左俣との出合が近くなると、デブリが出はじめて滑りにくくなる。涸沢の出合で小休止し、あとはひたすら横尾を目指す。今年は雪が多かったため、梓川に出るまでスキーを使うことができた。前穂や明神を眺めながら、上高地までまたスキーを担いで行く。
 今回は、体調が悪くて非常に登りが苦しく、石垣さんには迷惑をかけてしまった。しかし、天候に恵まれて、スケールの大きな山スキーができ、私にとってはとても印象に残る山行だった。

【コースタイム】
殺生ヒュッテ 7:10 −> 天狗原取付 7:30/45 −> コル 8:30/50 
−> 横尾 10:20/11:25 −> 上高地 13:55 

                                  (佐藤記) 


【概念図】

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