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ラ・ネージュ山スキー記録集III 


  発行日 1989年12月25日

雪倉岳                  

蓮華温泉〜雪倉岳                             

                  1988年3月19〜22日(前夜発4日間) 
         メンバー:L遠山友樹、加藤康男、柴崎松夫、小島利毅、岡坂準一 
                    鈴東文雄(遠山氏友人)   以上6名  

 3月の連休は、遠山氏の企画にのり、蓮華温泉〜雪倉の山行に参加した。 
4日間の内、晴れたのは入山日の19日と21日の午前中のみという天候であったが、21日午前中の晴天を利用して、雪倉山頂よりの大滑降を楽しむことができた。しかし入山日に振子沢源頭部で雪崩れにあい、遠山氏、鈴東氏、私(岡坂)が埋没するというアクシデントがあり、運よく助かったが反省すべきことが多い山行でもあった。


3月18日(金)
 急行アルプスの指定席が2組ずつ1時間おくれでしか取れなかったため、白馬大池で待ち合わせることとして、私と加藤氏が先に出発する。八王子より乗車したが、皮肉なことに指定席は満席で自由席はガラガラ。すぐ自由席に移り朝までグッスリ眠ることができた。

3月19日(土) 快晴、夕方より小雪 
 後から来る急行アルプスは信濃森上止りだったため、柴崎氏、小島氏とは遠山氏といっしょに栂池のゴンドラリフト前で待ち合わせることとして、白馬大池よりタクシーで栂池スキー場に向かう。
 天気予報では、明日より崩れるとのことだが、本日はすばらしい快晴である。栂池ゴンドラ駅前にて、予定通り遠山氏らと合流し始発のゴンドラに乗り、栂の森へ一気に上る。
 ゴンドラ終点より、リフトを乗継ぎ、頂上より北へトラバース気味にひと滑りして成城ヒュッテに通じている、林道に下りたった。
 ここでシールを付け出発する。45分程で成城ヒュッテに着き、一休みする。久し振りのテント泊りなのと、重量を無視した食料計画なので一人当りのザックの重量が20Kg以上と重く、また天狗原の上部斜面はクラストしていたため、シール登行に苦労する。
 同行の鈴東氏は年令が60才を過ぎているが、歩くペースも速く強いのでおどろいてしまった。 天狗原まで1時間15分で登り、大休止とする。
 ここまで来ると、後は蓮華温泉に通じている、振子沢を下りるだけなので、荷物の重さもあまり気にならない。1時間近く休んだ後、振子沢に入る。蓮華へのコースは振子沢の樹林帯より下りるのが普通であるが、我々は源頭部より滑ることとした。遠山氏に「ここを滑るの」「そうだ」の一言。それでは私がお先にとばかり、急な斜面(30度程度)に飛び込んだ。1回、2回とジャンプターンでスキーを回す。3回目のターンの時、雪質の変化のためかエッジをとられ転倒した。事故はこの直後に起こった。
 ビンディングをリセットしていたところ、遠山氏の雪崩だの声。うしろを振り向いた直後、雪崩に呑込まれ、あっという間に雪の中を流されていった。
 幸い、雪崩の規模が小さかったため、150メートル程流されて止った。頭が雪の外に出たため助かることができた。しかし流されている時は、完全に雪の中で、私はもしかしたら、これでダメかなと思った程だ。上から見ていた、小島氏、柴崎氏の話では、源頭部の雪面にクラックが入り、それが雪崩たとのことであった。遠山氏、鈴東氏は自力で脱出することができたが、私は自力脱出ができなく、遠山氏に掘りおこしてもらい、雪面に脱出することができた。雪崩は巾50メートル、長さ150メートルほどのきわめて小規模なものであったが、デブリの後はかなり深く、埋没しだいでは助からなかったと思う。雪崩でストックを失ってしまった。全員でデブリの中を探してみたが、すぐ無駄な労力と気がついた。ストックなしでも、どうにか蓮華温泉まで滑っていけると思ったので、出発することとした。振子沢の雪質は気温が高いためか悪く又荷物の重さもあり、全員滑りを楽しむことが出来ない。途中一度休み、1時間程で振子沢より中ノ沢へ少し登りかえして、蓮華温泉に通じている林道に下りたった。無雪期駐車場になっている所に早速6人用テントを張った。
 夕方、天狗方面から多くのスキーヤーが下りてきた。今日から、小屋がオープンするようだ。
 テントの中でお茶を飲みながらの話題は、当然本日の雪崩に関することばかり、結論は運がよかったの一言。私のストックは下山するまで、蓮華温泉の主人、田原氏に貸して頂いたので、明日下山しなくてすんだ。夕食はカレー、焼豚、リンゴとセロリのサラダ、味噌汁、つけものといった豪華版に全員満足して、8時過ぎシュラフに入った。天候は夕方から崩れ雪がふってきた。明日は停滞になりそうだ。

3月20日(日) 小雪後曇り
 朝4時30分に起き、テントの外をのぞいたが、天候はガスが多く雪が降っている。出発するパーティーもいたが、遠山氏のこんな天気ではすきーを楽しめないとのことで、停滞を決める。朝食後各自、自由に過ごす。柴崎氏と小島氏は温泉へ、遠山氏は平馬ノ平まで遊びに出かけていった。
 夕方から、ガスも晴れてきて、明日、どうにか天候が回復しそうな気配である。本日の夕食もビーフシチュー、シューマイ、つけもの、味噌汁といった豪華版を食べ、明日に期待した。

3月21日(月) AM晴PM雪、夜半より暴風雪 
 雪倉岳ツアーに出発。遠山氏、鈴東氏、小島氏は残念ながら、休暇の都合で本日下山することとなった。この時期、雪倉に登るには、予備日が最低1日張必要なようだ。テントは遠山氏に持ち帰ってもらうこととして、我々3人は、蓮華温泉に素泊りで泊ることとした。テント撤収その他雑用で、のんびりしすぎ、出発は7時になってしまった。
 天候はまずまずで午前中はもちそうに思われた。まずは平馬ノ平まで新雪を選び標高差150メートルほどの滑降を楽しむ。平馬ノ平より滝見尾根のコルまではスキーを引き、30分ほどでコルまで登る。ここまでは標識がついているので、迷うことはない。コルより瀬戸川までスキーひと滑りで下りたち、いよいよ雪倉岳山頂まで、標高差1300メートルの登りにかかる。
 シールを付けていくか、スキーを引張るか迷ったが、先行パーティーのつぼ足のトレースがついていたので、スキーを引張っていくこととした。雪倉の滝上部でひと休みする。
 ここからは私と加藤氏がシールを、柴崎氏がアイゼンで歩く。アイゼン歩行の柴崎氏は雪が柔らかく、もぐるため登行に苦労している。やはりシール登行のほうがはるかに快適であった。天候は午後くずれると予想されたため、休憩は息をととのえるだけにして、休まず登ろうと決める。
 心配していた雪の状態であるが、安定しており雪崩の心配はないように思われる。頂上直下150メートルまでシールのみで登っていったが、斜面のクラストがひどくなり、とうとうスキーアイゼンなしでは登れなくなった。ザックよりスキーアイゼンを取出しスキーにセットしようとした時、スキーが手から滑り、流れてしまった。私は2月の日白山でもザックを流しており、ザックには十分注意していたのだが、今度はスキーを流すという大失敗をしてしまった。幸いスキーにシールを張っていたためか、300メートルほどで止ってくれた。丁度加藤氏が近くを登っていたので、ひろってもらい、私のところまで持って来てくれたので取りに行かないですんだ。(加藤氏に感謝)ここから頂上までは、柴崎氏がアイゼンで稜線を、私はスキーアイゼンを装着して、スキーで頂上直下の斜面を登る。頂上着12時15分。蓮華からほとんど休まなかったが、5時間以上もかかったことになる。
 天候は崩れてきており、ガスが頂上付近を覆いだした。加藤氏が登って来る間、私は高度計の針を山頂の高さに調整し、万一視界不良となった場合、標高差にして150メートル滑降した後、北へトラバースしようと考えていた。そうすれば登ってきた斜面に戻れるはずだ。頂上よりの滑降は上部150mがアイスバーン状で、後はまずまずの雪質であった。各自のペースでほとんど休まずに滑りおりる。雪質の悪い所は、谷開きシュテムターンでおりる。この技術は抵抗の多い悪雪にもスキーを回しやすく、また疲れない。雪倉の斜面のおもしろさは比較的急な斜面が標高差にして1300メートルも続くことである。今朝出発した瀬戸川まで約45分でおりてきた。加藤氏も柴崎氏も大満足であったようだ。ここまで下りると天候が悪くなっても、比較的安全なので、大休止とする。蓮華までの帰路は滝見尾根をシールを付けたまま、トラバース気味に戻る。わかりづらいコースであるが先行者のシュプールがハッキリ残っていたため、迷うことなく無事、蓮華温泉に帰りついた。天候はしだいにひどくなり、夜半より暴風雪となった。

3月22日(火) 雨
 朝6時に目をさましてみると、外は暴風雪で視界不良である。どうやら低気圧が通過しているらしい。午前中停滞して様子をみることとした。11時に昼食を食べた後、雨は降っているが、風がおさまり、視界もよくなってきたので、出発する。林道より沢に入り標識通りに角小屋峠を目指す。角小屋峠まではシールをつけたままで進む。角小屋峠の登りでは、私はストックがないので苦労する。峠で長く休む気にもなれないので、行動食を少し食べただけで、ドンドンおりる。大所部落にてタクシーで平岩に出たが、すでに中央線では、本日中に帰れないので、糸魚川経由長岡より上越新幹線にて帰宅した。

                                  (岡坂記) 

【コースタイム】
3/19 栂池スキー場リフト終点出発  8:45                
     成城ヒュッテ         9:30/9:45           
     天狗原           11:00/11:50          
     雪崩に遭遇         12:05/12:30          
     蓮華温泉          13:30                

3/21 蓮華温泉出発         7:10                
     滝見尾根           8:00                
     雪倉山頂          12:15/12:45          
     瀬戸川           13:25/13:45          
     蓮華温泉          14:50                

3/22 蓮華温泉出発        13:20                
     角小屋峠          14:40/14:50          
     木地屋部落         16:00                
     大所部落          16:45                


【概念図】                             
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