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      Nov 9, 1997
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ラ・ネージュ山スキー記録集III 


  発行日 1989年12月25日

トムラウシ                    

北海道 / 旭岳より縦走                          
                      1988年4月29日〜5月2日 
       L:岩毅、M:小林真人、篭島寿一、菅沼博、柴崎松夫、佐藤晶彦 

4月29日(金) 晴れ                           
 前日の夕方6時20分、大宮より寝台特急“北斗星3号”に乗り込む。青函トンネル開通で札幌まで乗り換えなし、寝台での快適な列車の旅である。       
 大宮より16時間半で札幌到着、朝食のような昼食を済まし、余分な荷物をコインロッカーに預けて13時発特急“ライラック”で旭川に向かう。旭川よりタクシー(小型8800円)、ロープウエイ(荷物代込み1360円)と乗継ぎ、ほとんど歩くこと無しで旭岳石室に入る。一日中よい天気でもったいない日であった。   
 旭岳石室は半分雪に埋まっており、先客もいたので我々は一階に入った。光が入らず暗く、床板は隙間だらけ、ところにより雪解け水がぽたぽた落ちて快適とは言い難い。

4月30日(土) ガス                           
 夜半より雨、朝になっても小雨で視界も無いので10時頃までシュラフの中で過ごす。10時過ぎに外へ出てみると、雨が上がり天候が回復しつつあるではないか。今からでも白雲小屋へは入れると、あわててパッキングし、行動食を食べて11時15分に出発する。しかし、30分も経たぬ間に再びガスが濃くなってしまった。
こんな日に行動してもつまらないと、予備日も充分にある気軽さから引き返して停滞と決める。
 時間があり過ぎるので、ロープウエイ姿見駅の食堂へ入りダラダラと午後の時間を過ごす。カゼが完全に直っていない私には、よい休養になった。4時近くになって、暗い石室に戻り夕食を取ってすぐに寝た。                 

5月1日(日) 晴れ後曇り                         
 快晴とはいかなかったが行動は十分に出来る天気だ。旭岳が目の前に大きい。上は風が強そうだ。本山行の最初にして最後の登りらしい登りをスキーアイゼンを利かしていく。頂上直下は急で雪も硬かったが、岩さんはスキーで快調に登っていく。
頂上に着いてみると、何とスノーモービルが2台来ている。しばらくして下っていったが、旭岳の頂上で排ガスを吸い、気分を害する。               
 雲が少し多いが、行く手の忠別、化雲、トムラウシと続く山並みが美しい。頂上でシールを外し、東面の大斜面を滑降する。昨日、動けなかったウップンをはらすように、皆カッ飛んで行く。雪質はちょうど良く、装備・食料の軽量化をしたので快適に滑ることが出来た。
 後旭岳との鞍部からは、しばらく沢の中を滑り、次第に東へとルートを取って、融雪沢1600mに出る。雲が低くなってきたため、予定していた緑岳からの滑降はパスして、高根が原を真っ直ぐ突っ切り、忠別岳を目指す。滑降予定の緑岳の広斜面には雪が無く、パスしたのは正解であった。高根が原は本当に広くて、歩いても歩いても忠別岳が近くならない。時折雲の間から、旭岳が出るのを振り返って眺めながら歩く。忠別岳手前ではキツネが出迎えてくれた。全く人間を怖がることなく近づいてくる。行動食をやったらしばらくついてきた。 
 忠別岳頂上は西面が切れている。本日2本目の滑りであるが、南面は岩やハイマツで雪が無く、少し東に進んでから忠別小屋に滑り込む。日が上がって悪雪となった上に、斜度が無いので滑りにくい。忠別小屋はきれいな小屋だ。小林さんが少し不調でガスも出てきたが、まだ12時なので本日は一気にヒサゴ沼まで入ることにする。五色岳までは、展望も無くなり単調な登りで、ここからはほぼ等高線沿いに進み、化雲岳から南に落ちる尾根の手前からヒサゴ沼へほとんど直滑降で滑る。  
 ヒサゴ沼の小屋は全部雪から出ていた。ここも2階は満杯で1階に入り、雪解け水が落ちないところに陣取る。旭岳小屋に比べると床に穴が開いているようなことが無く、何よりも明るいので快適だ。1階の入り口は雪が入って開かなかったが、菅沼さん等の精力的な除雪により、2階入り口から出入りする必要が無くなり便利になった。                                 

【コースタイム】 
旭岳石室 5:30 −> 旭岳 6:55/7:35 −> 融雪沢(1600 
m) 8:15/8:25 −> P1833m 9:55/10:20 −>  
忠別岳 −>11:25/11:45 −> 忠別小屋 12:05/12:30 
−> 五色岳 13:30/13:40 −> ヒサゴ沼 14:50      


5月2日(月) 曇り後晴れ                         
 4時に起床して窓から外を見ると、ガスが濃く行動できそうにない。停滞を覚悟するが、とりあえず朝食を摂る。朝食中もガスが濃くなったり、薄くなったりしている。菅沼さんと私は行動しようと主張するが、リーダーの岩さんは停滞を決めた。
私は寝ているのにも飽きたので、近くで遊んでこようと支度をして外へ出てみると、ガスが切れ、晴れ間が出てきた。急きょ、出発となる。準備が完了する頃には、すっかり晴れ上がった。昨日よりもよい天気である。                
 トムラウシ周辺は複雑な地形をしている。夏に来ると気持ちよさそうなところだ。標高2000mから、シートラーゲンで登る。頂上付近は露岩帯の急斜面で、スキーでは登れない。ヒサゴ沼から2時間強でトムラウシ山頂着、北側の旭岳方面は雲の中だが、十勝から石狩・ニペソツの方は雄大な眺めである。           
 いよいよ本山行のメイン、トムラウシ南東面の滑降に入る。頂上直下でスキーを履き、まずは双耳峰の鞍部へ滑降、岩を避けるようにしトムラウシ南西面に出ると、2050m付近から広い斜面となり、快適に滑降することが出来た。天気も良く、やっと春山らしくなってきた。岩さんがトップで飛ばしていく。前トムラウシを前方に見ながら、カムイサンケナイ川右俣源頭部に滑り込む。ほぼ夏道沿いにトレールがあるのを見て、1500m付近から尾根をトラバースし、左俣1340mに降りる。
 シールを付けて一休みしていると、妙な足跡がある。「熊じゃないの?」と菅沼さん。あわてて出発するが、近づいてみると人の足跡だった。15分ほど登って、再び滑降に入る。しばらくは林間を気持ち良く滑ることが出来たが、1000m下がると尾根が広くなり、ルートが分かりにくくなってきた。ほぼ夏道沿いに降りれば良いのだが、いつのまにか林道に出ていた。トムラウシ温泉は右か左か?少し迷って下っている方向に進む。雪が所々なくなり、スキーを着けたり担いだりが煩わしい。“緑雲橋”の表示の橋を渡って、ユウトムラウシ二の沢の方へ早く下りすぎたことが解る。14時過ぎに温泉に着く。即、東大雪荘に宿泊を申し込む。幸運にも6名で2部屋確保することが出来た。早速、ビールで乾杯して温泉に浸かり山行前半の汗を流した。                              

【コースタイム】 
ヒサゴ沼 7:35 −> トムラウシ 9:50/10:15 −> カムイサ 
ンケナイ川左俣(1340m) 11:15/11:25 −> トムラウシ温泉 14:05 

                                (佐藤記) 

【概念図】                                   
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