Last Update :Jul 27, 1999 概念図追加
Jan 24, 1998
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 ラ・ネージュ記録集II 

  発行日 1982年10月1日 
  発行人 山スキー同志会    
  編集人 斎藤 進、川口敏博 他

立山                   

北アルプス / 真砂沢、長次郎谷 

                         1981年6月6日〜8日 
                        メンバ:L菅沼、斎藤、陶山 

6月6日(土) 晴のち曇り

 前夜上野発21:42急行越前で出発する。 さすがこの時期になるとスキーを持った人も少なく、すいた列車でゆっくり寝てゆける。富山で地鉄に乗りかえ室堂へ向かう。 このアルペンルートでは荷物の重さをきちんとはかるので10kg程度の荷物の持ち主は紙袋等へ適当に入れ、ザックの重さを10kg以下にすると全ルート荷物代を節約できる。
 去年の同じ時期よりもずっと多い残雪の中を抜け室堂に着く。後で聞いた話だが今年の残雪量は例年の5月上旬に匹敵するとのことだった。
 ターミナルの屋上で出発の準備をする。一歩外へ出るとすぐに雪の上を歩くことになる。 今日は天気が良く立山や大日岳が良く見える。 みくりが池温泉の上でスキーをつけ雷鳥沢めがけて滑り少し楽をする。照りつける太陽で雪がグズグズになっており足をとられ滑りづらい。先が心配だ。雷鳥沢を渡り、ザックにスキーをつけて大走り沢の雪の上を登る。沢の中は照り返しで大変暑い。稜線付近には雪がなくハイマツの中を少し登ると稜線だ。この頃から空がくもり始め時々ガスが稜線を越えてゆく。別山と真砂岳との最低あん部より少し真砂岳寄りに出た。
 大分汗をかいた体にあたる風が冷たい。目の下には真砂沢のカールが広がっている。稜線直下は雪庇らしく何も見えない。あたりを見廻し、最低あん部あたりが雪庇になっていないのを確認し、そこから滑り出すことにした。
 コルから斜滑降で滑り出す。滑るあとから雪が崩れ、あまり気持の良い滑降とはいえないのが残念だ。丁度3月の棒立山から滑った時の雪質に似ている。気をとり直し思いきり滑る。結構回転して滑れるものだ。別山側の岩壁を見上げながら、力の要る悪雪に苦労しながらも快調に滑る。急な部分は稜線直下だけで、少し下ると幅の広い、緩傾斜の滑り易い沢だ。 心配していた滝場は全て雪の下で何の苦労もせず真砂沢出合の剣沢へ下った。ここで大休止をとり、ゆっくりする。さすがに剣沢は雪の量が多い。側面からの雪崩れのデブリが固まっているため雪はしまっている。
 スキーを引っ張り剣沢の長い長い登りの始まりだ。長次郎谷を滑っている人が見える。出合からは右俣が見えるだけだ。この辺の景観はダイナミックだ。黒々とした岩壁の間を滑る爽快さは格別だ。平蔵谷は出合から上部が良く見える。一枚の急斜面といった感じだ。剣沢小屋が休みなので仕方なく剣御前小屋へ登る。この最後のワンピッチが予定外で、この登りで体が完全にマイってしまった。久し振りの小屋泊りで荷物が軽かったので何とか行動できたという感じがする。

【コースタイム】 
室堂 9:45 → 雷鳥沢 10:10 → 稜線 11:45/12:15 → 
真砂沢 12:40/13:20 → 剣御前小屋 17:00 


6月7日(日) 曇り

 小屋の横でスキーをつけ剣沢を長次郎谷の出合へ滑る。剣沢本流は傾斜がゆるく、昨日の足跡やシュプールが固まっているので別山寄りを滑る。きのうの登りがうそのように快調に下る。平蔵谷の出合を過ぎるとデブリの上を滑るため滑りづらい。剣沢だけが目的ならば剣沢小屋の少し下でやめて登りかえす方が良いようだ。気にせずにどんどん下り真砂沢あたりまで下ってしまうと後の登りかえしに泣かされる。
 ザックにスキーを付けて長次郎谷を登る。登るに従って熊岩が姿を現わす。どんどん高度をかせぐ。ルートを左俣にとり狭いノドを通過する。ここからコル直下までほとんどデブリの中を登る。しかし雪崩はきのうのうちに落ちきってしまったようなので比較的安心して登る。剣岳側の側壁が近づくとコルだ。もちろん雪の上だ。今日はここまでとし、下る用意をする。コルから見おろすといやに急に見える。
 冷たい風が吹くコルに長居は無用だ。滑り出しは少し急だが雪質が良く数回回転して滑る。そこから下は一面デブリの海で滑りようがない。デブリとデブリの間の幅2〜3mの斜面を適当にひろいながら横滑りで下る。熊の岩の上をトラバースして右俣へ出る。右俣もデブリで一杯だが広くて良い。
 熊の岩の下からは雪質が良くなり出合目指して一気に滑りおりる。 出合でコーヒーを飲みゆっくり休む。あとは長い長い登りを小屋までがんばるだけだ。

【コースタイム】
御前小屋 7:40 → 長次郎谷出合 7:55/8:20 → 熊岩下 10:00/40 → 
コル 11:50/12:20 → 長次郎谷出合 13:00/40 → 小屋 16:00


6月8日(月) 快晴

 今日は朝から雲ひとつない晴天だ。今山行を通じ初めて残雪をまとって聳える剣岳を間近に望むことができた。昨日の冷え込みのため雪が堅く凍っている。剣沢を照らしている太陽は、雷鳥沢には届かない。
 雷鳥沢に陽が当り始めるのを待って出発する。雪はまだガリガリでころぶと下までズリ落ちてしまいそうだ。小屋の主人は片足スキーですっ飛んで下って行った。我々は慎重に滑る。途中から右手の尾根の上を滑る。ここは傾斜がゆるく滑り易い。
 雷鳥平でひと休みし、室堂へ向かい登り始める。3日間のあいだに大日岳の雪庇が大分小さくなってしまったようだ。大走り方面を見ると2日前に登った一筋のトレールが見える。去年大雨の中を逃げるように登った時とは大分違って、今日はいろいろ楽しみながら登れる。室堂に着き個人的にビールで乾杯をする。ルート周遊券に従って大町側へ下山する。

【コースタイム】 
御前小屋 7:45 → 雷鳥沢 8:05/20 → 室堂 9:00   


(菅沼 記) 

【概念図】                                    

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