Last Update : Apr 16, 1999 概念図追加
Jan 10, 1998
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 ラ・ネージュ記録集II 

  発行日 1982年10月1日 
  発行人 山スキー同志会    
  編集人 斎藤 進、川口敏博 他

富良野岳                 

北海道 / 原始ヶ原より
 1981年12月29日〜1982年1月3日 
 メンバー:CL:菅沼、SL:小森宮、高野、長谷川、今野、斉藤、陶山、蔵田 

12月29日(火)曇り後雪

 前夜羽田を出発し、札幌で一泊した。朝7:05発の急行で富良野へ出発する。約2時間で富良野に着く。スキーヤーは大勢いるが登山者は見当たらない。登山口の布礼別へはタクシーを利用する。さすが北海道、だだっ広い原野でタクシーを下りる。
 スキーにシールを取り付けたり出発の準備を済ませる。生憎の曇天だが右手に布部川の切れ込みが見える。
 いよいよ出発だ。先行パーティーのトレールがあるのでそれに従って前富良野岳の長い長い裾をゆっくりと進む。べべルイの廃村辺りから雪が降り出してきた。道が右に曲がり布部川沿いの道になるとすぐに秋雲橋だ。対岸に小屋が見える。
 右岸の林道を暫く進み一の沢沿いの夏道をルートにとる。初めのうちはブッシュが多い。積雪が少ないようだ。途中650m辺りの平たん地に天幕を張り、第一日目の行動を終了した。
 少し豪華な食事で北海道の雪山の第一夜を祝った。雪は降り続いているが思ったよりも寒くない。今年は暖冬とのことだ。

【コースタイム】
札幌 7:05 → 富良野 9:30/10:20 → 布礼別 10:45/11:00 → ベベルイ 11:30/12:00 → 秋雲橋 13:40/50 → 650m 14:45


12月30日(水)雪後曇り

 夜半に30cm位新雪が積もり前日のトレールが消えてしまっている。雪が降り続く中を原始ヶ原に向かって出発する。ルートはほぼ夏道通りに取る。750m辺りからは右の標高尾根に登る。標高尾根下部からは傾斜も緩く、多少ブッシュや倒木が目立つが快調に登る。尾根上の850m付近に先行パーティの幕営跡があり、そこからは再びトレールに従う。
 夏道が尾根を横切る辺りから尾根の傾斜がきつくなり、倒木を避けながらの登りは大変辛い。途中でキツネの姿を見つける。1000m付近から、尾根から離れ二の沢を渡り少し登ると1050m辺りの原始ヶ原の入り口に着く。
 太陽も顔を出し、ゆっくりと展望を楽しむ。広く平たんな原始ヶ原が眼前に広がり、右手にはトウヤウスベ山も見える。はるか遠くに下ホロカメットク山の三角形のピークも見える。
 原始ヶ原へは等高線に沿って進む。原の中に入ると蝦夷松の樹林帯になってしまい、現在地の確認がしづらい。三の沢を渡り右手に大麓山がよく見える小さな雪の原にB.C.を設営する。

【コースタイム】
テント地 7:10 → 標高尾根上 8:45/9:05 → トラバース地点(980m) 10:50/11:00 → 原始ヶ原入り口 11:45/12:00 → B.C.(1100m) 12:45


12月31日(木)晴れ後曇り

 朝、素晴らしい天気の中、軽いアタックザックを背負って富良野岳を目指す。約20分ほど森林の中を北上し、そこから前富良野岳とのコルに向かう。途中三の沢を渡り暫く進むと樹林もまばらになり、朝日に輝く前富良野岳が見え、そこを下っている人も見える。
 コルへは登らず、三の沢のとなりの沢を登る。森林限界を過ぎると傾斜もきつくなり、雪もしまって登りづらい。1600m付近までシールで登り、スキーをデポする。
 アイゼンに履き替え頂上を目指す。膝までのラッセルをしながら急斜面を登る。ワンピッチで肩に着く。風の強い稜線を辿りわずかで富良野岳頂上に立つ。割と広い頂上だ。高曇りなので展望がよい。北側には端正な三角形の十勝岳、その奥の高い山々は大雪の山々、原始ヶ原もよく見え、広大な樹林の間に夏の湿地帯が点在している。
 寒いので早々に下る。デポ地点まではほんのひと下りだ。行動食等を食べゆっくり休む。前富良野岳の広く大きな斜面が正面に見える。
 滑り出して暫くはクラストした雪を快適に下る。樹林帯は北海道の粉雪だけのことはあり、林間も快調に滑る。デポ地点より約40分でB.C.へ戻った。

【コースタイム】
B.C. 7:10 → 三の沢 8:10/20 → スキーデポ(1600m)地点 9:30/10:00 → 富良野岳 11:00/15 → デポ地点11:45/12:20 → B.C. 12:50


1月1日(金)雪

 昨夜からの雪が降り続いている中を出発する。新雪をラッセルしながら登るが雪が軽く、荷も軽いので苦にならない。ガスの為周りが見えず地図と磁石に頼り北東方に進む。1250m付近で五の沢らしき沢を渡り、広い雪原に出る。そこを横切り沢を渡り、三峰山から南西に伸びる尾根(だと思う)に取り付く。尾根上を5人のパーティが登って行く。
 尾根上に出ると風が強く、ガスも一段と深くなりただ尾根を直上する。途中1650m付近で、ガスと風の為行動を打ち切り下山することにした。
 急な斜面でスキーを着けガスの中、赤布を頼りに滑る。ガスの為雪と斜面がよく見えず、硬い雪と新雪とが入り乱れておりやたら転びながら滑る。
 登りのトレールは所々で消えており赤布を頼りにB.C.へ下る。 傾斜が緩くなっても軽い雪なので滑り、思ったよりも楽にB.C.に帰り着いた。

【コースタイム】
B.C. 7:00 → 沢(1300m) 8:50 → 尾根上(1440m) 9:20/25 → 1650m(下山) 10:05/25 → 沢(1300m) 10:45/11:10 → B.C.11:50


1月2日(土)雪

 アプローチが長いので一日予定を早め下山を開始する。登った時とは別の布部川左岸の山を越えて下山することにした。
 相変わらず雪が降っており原始ヶ原の横断は新雪をラッセルしながら下る。五の沢を渡る辺りから倒木が目立ち始める。 倒木のブリッジで危うく五の沢を渡る。時々トウヤウスベ山が見え、行き先を確認しながら進む。
 赤岩の滝の少し上流布部川を渡る。ここも小さなスノーブリッジをやっと渡った。樹林帯の為現在地の確認が難しい。尾根らしきところに取り付き、高度を少し上げると原始ヶ原がよく見えるところに出る。B.C.のあった場所を探してみるがよく分からない。ここから見る原始ヶ原は倒木が目立つ。
 登るにしたがって雪質も良くなり、広い斜面に出る。滑りたい衝動を押さえコルに出る。コルは高曇りで富良野の平原が見え一安心する。
 北側の1230mピーク南東斜面は格好なゲレンデを提供してくれ、空身で登り一回だけ滑りを楽しんだ。
 コルから沢筋を滑り布部川へ下る。上半分は雪・斜面ともによく快適に滑れたが下半分は樹林帯の中になってしまい新雪だから滑れたようだった。布部川との出合は10m位の滝になっており、少し下流へ回り河原へ下る。
 予想はしていたが、布部川は雪に埋まっていず流れが顔を出している。対岸も崖になっており簡単には登れそうもない。大変なところに下りてしまったという感じだ。偵察の結果下流は渡れそうもなく、上流を見る。不動の滝の下まで偵察した結果一ヶ所だけ貧弱なスノーブリッジがあり、偵察の長谷川が渡り対岸へ取り付く。全員が何とか渡り対岸の大地に集まった時には今日の疲れがどっと出てしまった。林道をラッセルしながら下り、秋雲橋横の小屋に一泊した。

【コースタイム】
B.C. 7:30 → 五の沢 8:10/15 → 布部川 9:00 → コル1220m) 10:35/11:05 → 布部川(660m) 12:30 → 対岸 14:10 → 秋雲橋 15:00


1月3日(日)曇り

 今日は布礼別へ下山するだけなのでゆっくりする。来た道をそのまま下る。新雪が積もっており、シールを着けラッセルだ。入山の時車を降りたところでシールを取り布礼別まで滑る。
タクシーで富良野へ、さらに札幌へ出、翌日の飛行機で帰京した。

【コースタイム】
秋雲橋 6:45 → ベベルイ 7:35/45 → 布礼別 8:40/50 → 富良野 9:10

(記:菅沼、電子化:作野) 

【概念図】


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