Last Update : Jan 1, 1998

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 ラ・ネージュ記録集II 

  発行日 1982年10月1日 
  発行人 山スキー同志会    
  編集人 斎藤 進、川口敏博 他

随想 その2 

蔵田道子

 山スキー同志会に入会して早や1年、「1年の山行をふりかえって」という事で、私のこの会における山行を考えてみたい。
 私と山とのかかわりは、学生時代のワンゲル活動からで、長い間、その延長での山行が多かった。山スキーは、昔からあこがれていた分野ではあったが、仲間がいなくてそのままになっていた。

 昨年、山渓の山スキー特集号でこの会の事を知り、入会しようかと迷った。まず年令の事、今さら山岳会に入って、山スキーという一種の冬山の山行を行う事ができるかどうかという事、用具の問題もあった。私の持っているのは、昔のワイヤー式の締具、靴も夏山縦走用の登山靴、本格的にやるには、買いかえねばならない。時期的にも、シーズンは終りかかっていた。

 しかし、とにかくやってみる事にした。そしてやるからには早い方が会の雰囲気になれる為にも良いと考えた。初めての会山行は、5月連休にそなえての雪上訓練、雪訓そのものは、アルパインガイド協会のものを受けた事もあり、まったく初めてという訳ではなかったが確保技術などは全くむずかしく要領がよくわからなかった。

 そして5月連休の吾妻、ザラメ雪で、あまり急斜面はなかったので、私の旧式な道具でも何とか行けたが、すべるよりは歩いている方が楽しかった。 納会も1日だけの参加で、すべる時間は少なくほっとする。とにかくゲレンデの踏み固められたバーンは恐怖だった。そして、スキーシーズンが終わると、又私にとって未知の分野、沢登りを経験する事になる。もともと山スキーをやりたくてこの会に入ったのに、沢登りをやる事になろうとは!!
沢登り、岩登りは、絶対にやらないと決めていたのに…。はじめての沢は、それこそ、沢登りなんてどこが良いのかという感じ方しかできなかった。沢登りに関するイメージをかえたのは北海道の沢、静かなナメが延々と続き、高山植物が河原に咲き、イワナつりまで楽しめ、まさに自然がいっぱいという感じ、そして秋の豆焼沢、紅葉がハラハラと風に落ち、沢に浮かぶ静かな沢、そこには縦走では、この頃めったに味わえない静けさがある様に思った。

 そして再び、又いよいよ本格的な山スキーシーズンの到来。その前に初冬の爺ヶ岳山行、凍傷にかかった人もでたりで、稜線で吹かれて、結構厳しい一面を見せつけられた山行でもあった。初すべりのゲレンデ練習は谷川天神平、私にとっては新しくつくった山靴と、山スキーをためしてみるのも目的だった。 前の週に、ゲレンデ用のスキーとスキー靴ですべっていたので、はじめは少しすべりづらかったが古い山靴とワイヤーのスキー板より数段すべり易く、これなら結構すべれそうだという感じを持った。
 そして正月休みを利用しての本格的な山スキーの山行は北海道。パウダースノウを十分に味わう余裕もなく、必死について行った山行だった。思ったより寒くなかったのが救いだった。
 1月連休の焼石はラッセルの大変さを知らされた。ただ、ラッセルが大変という事は、後からついてゆく時は楽だ。ゲレンデ練習の関温泉は、新雪の急斜面の練習ができて良かった。荒らされていない斜面はかなり急でも、新雪が積もっていればそれ程、スピードも出ず、快適にすべれる事を知る。それは、2月の八幡平茶臼の斜面、3月の高津倉の斜面でも感じる。そして、それとは逆に、2月の巻機で、雨の後の重い雪と、稜線のアイスバーンという条件に又、スキーのむずかしさをおもい知らされる。同じ巻機の井戸の壁が、4月に行った時は新雪で、2月の時よりはすべりやすかった。同じ4月の浅草岳では、アイスバーンぎみの斜面ではあったが、傾斜がゆるいし、コブがないので、何とかすべれる。

 以上、ざっと山行をふりかえってみて、とにかくつれて行ってもらう、ついてゆくという感じの山行ばかりの一年だった。(後、4月の八甲田と3月の蓮華温泉があるが省略)今、思うのは、これから先、どれだけ、自分で、行ったという山行ができるだろうかという事、というのも、今のままでは、自分に合った満足した山行ができるのは少なくなると思うから。入会した当時は、スキー場をちょっと出た様な軽いツアーで十分だと思っていた。今は自分の実力を考えもしないでと思われそうだが、ある程度ハードな事もやってみたいと思っている。楽だったなァという山行は、あまり心に深く残らない様に思うから。
 それからリーダーにならなくても、自分で企画して自分でやったという山行を目ざしたい。もちろん、それなりに体力と技術の範囲で…。とはいえ、この1年、自分でもよく山行に参加したものだと感心してしまう。そして良き山仲間を得られて、この会に入って本当に良かったと思っている。

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