Last Update : Jan 30, 2012
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ラ・ネージュ山スキー記録集 I 


  発行日 1980年11月1日

秋田駒ケ岳〜乳頭山

1980年4月30日〜5月1日
L:藤谷、福田、佐々

4月30日(水) 晴れのち曇りのち霧雨

ゴールデンウィークに入ったというのに、田沢湖国際スキー場のリフトが調整のため運休するという情報を入手。そこで、雫石からタクシーを利用し、国見温泉から入山することにする。

絶好の春スキー日和で、自分たちのシールの音と鳥の声しか聞こえない。谷間から横長根の稜線に出ると、多少風があるものの、快晴で、小岳や女岳等パノラマを望みながら快適に幅広の稜線を進む。

横岳山頂からは、女目岳との鞍部に立つ赤い屋根の阿弥陀池小屋を目指して、トラバース気味に滑る。すごい轟音が響き渡り、改めて静寂を感じさせられる。老朽化して、使用不可能と思っていたが、1978年秋に改築した居住性の良い清潔な小屋である。

天気が下り坂なので、昼食後さらに進む。しばらく大雪原を行くと低木の間を抜けて、湯森山の登りとなる。このあたりから、太陽が陰り曇り空となる。熊見平の東斜面は、想像を絶する大崩壊で完全にえぐれており、知らずに滑りこむと大変だ。2.5万分の1の地形図には勿論出ていない。東北で珍しく厳しい風景を眺めながら笊森山の長い登りにかかる。

次第に疲労が蓄積して、笊森山頂に達する頃にはガスが立ち込めてきて、薄暗くなる。行動食を詰め込み、ヤッケを着て夕方の急激な気温の低下に備える。乳頭との鞍部までの下りにかかると、完全にガスに巻かれ視界が効かなくなる。地図とコンパスでルートを修正しつつ、アイスバーンに近い急斜面を、谷側でストック制動して安全に進む。無事に通過すると、乳頭山の最後の登りになる。

乳頭山といういかにも柔軟な印象を受けるが、実は急峻な東北の山とは思い無い様な厳しさを持っている。岩が多く露出しているので、スキーを担いで登っていると、山頂間近で大雪庇に立ち塞がれてしまった。左側は切れ落ちた雪壁である。キックステップでようやく稜線に出ると、今度はしの竹の位置から2〜3m内側にヒビが入っていて、知らずに通ると雪庇を踏み抜いてしまう。緊張の連続で、乳頭山山頂に達してもあまり感慨がわいてこない。

あたりは暗くなってしまい、小屋までは下りのみというのにスキーを担いだままヘッドランプの明かりを頼りに進んで行く。すると全く思いがけなく小屋から信号を送ってくれている。小屋の位置が確認できて一安心だ。田代平山荘にたどり着くと、鷹が私たちを見下ろして迎えてくれた。

【タイム】 

雫石7:00→国見温泉7:30/8:15→横長根9:40→横岳12:00→阿弥陀池小屋12:05/13:50→湯森山15:00→笊森山16:35→乳頭山18:45→田代平山荘19:10


5月1日(木) 雨のちみぞれ

目覚めると鷹が相変わらず繋がれている。夜から明け方にかけてかなり雨が降っていたため、鷹師も獲物を取りに出かけられず、鷹君共々退屈そうである。

楽しみの筈の下りもこの雨でベタ雪となり、期待できそうにないので、温泉だけを楽しみに滑降を開始する。夏道沿いの稜線から蟹場温泉へ向かう分岐あたりで迷い易いが、尾根通しに蟹場温泉裏まで滑りこむ。この下りは山スキーを楽しむには少々物足りない感じがする。しかし、逆コースを取るなどして他の斜面を選べば、滑りを楽しめる良いコースのある山域であると思う。

あとの新聞で分かったのだが、鷹は三歳のオスで「加無号」というそうで、今冬修行のため東北の山々を巡っているそうである。

【タイム】 

田代平山荘11:50→蟹場温泉14:40

(佐々 記) 

【概念図】
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